泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第47話>
<第47話>
こんなの、浮気よりはるかにひどい。桃花たちのせいで、もしかして貢がされてるのかも、とは思った。でも後ろに組織がついてることまでは考えもしない。
つまり、ハルくんがわたしと付き合ったのは、わたしに利用価値があるからで、そもそもハルくんはわたしのことなんて好きでもなんでもなかった?
信じていたものが、わたしを支えていたものが、砂のお城みたいにボロボロあっけなく崩れていく。
「セクキャバで君のことスカウトしたのも、もちろんハルは最初から知ってたんだよ。だってほら、君みたいな普通の子がいきなり風俗じゃ、ハードル高過ぎだろ? まずはセクキャバでオヤジに触られたりキスされたりするのに慣らして、それから風俗ってわけ」
「妹のことも、嘘なの?」
「妹? キャハハ、お前そんなウソついてたのかよー! バレバレじゃん」
松木さんが心からおかしそうに笑う。
この人はわたしがハルくんを真剣に好きなことも、そのためならなんでもする決意があったことも、バカにしきっている。
「誰のこと言ってるのかわかんねーけど、今ハルの彼女は6人もいるよ。あ、君がクビになったから、5人か」
「嘘……」
「じゃ、俺はこれで。あとは2人でゆっくり、別れ話でもしてな。あと君、もう変な男に引っかかるなよー。どうせ君程度の顔じゃ大して稼げないんだからさ。真面目ちゃんは真面目ちゃんらしく、勉強でもしてるんだな」
松木さんがひらひら手を振って部屋を出て行く。
はあぁ、とハルくんが深いため息をついてソファーに腰を落とす。
呆然としているわたしと目が合うと、またため息をこぼす。
参ったなぁ、って顔。
一度氷点下まで冷えたハルくんの瞳は、二度と温度を取り戻すことはない。
「なんで……どうして……?」
ハルくんは答えない。
いや、今目の前にいるハルくんはもう、わたしが好きだったハルくんじゃない。大好きだった、愛してくれた、優しいハルくんは、世界のどこにもいない。
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