Kiyomi〜風俗嬢の恋 vol.4〜<第10話>

2014-01-28 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,086 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Kiyomi 連載小説 風俗嬢の恋


 

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<第10話>

 

富樫さんのテノールの声が斜め上から降ってくる。

 

「清美は、普通の仕事する気はないの? 俺はもうこのトシだから、一生ゴミとして生きてくしかないって覚悟してるけど」

 

前に話してくれた。

 

富樫さんは母親に何人も愛人がいて、父親は飲んだくくれで暴力を振るう、そんな冷たい家庭で育った元暴走族のリーダーだった。

 

時々、表の社会を敵視しているような目つきをするのは、その名残かもしれない。

 

「清美は、まだ若い。これからいくらでもやり直せる」

「そんな気力、ないよ」

「そこが甘えてるって言うんだよ」

 

富樫さんはバッサリ切り捨てる。

 

たしかにあたしは甘えていた。富樫さんに、残り少なくなってきた自分の若さに、風俗という仕事に。

 

でも甘えない生き方なんてどういうものか、どうしたらできるのか、まるでわからない。今までこんなふうにしか生きてこなかったんだから。

 

富樫さんは近くのコインパーキングに停めていた車にあたしを乗せて、マンションまで送ってくれた。お茶ぐらい飲んでいけばと言ったら、やんわり断られた。

 

本当は誰よりも富樫さんに抱かれて、気持ちよさであたしをいっぱいに満たしたかった。たぶん、満たされることなんてないだろうけど。

 

 

 




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