フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第16話>

2014-03-23 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,020 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Aimi フェイク・ラブ 連載小説


 

JESSIE

 

<第16話>

 

別に李香のどこが嫌いというわけではないけれど、短大時代は毎日のように会っていた友だちの1人である李香が、その存在だけが、疎ましかった。

 

会社をクビになって、ヒモ化した聡を養うため風俗嬢になってしまった今の自分を、誰にも知られないたくなかった。

 

気が進まないままアドレスを交換すると、李香は先に立ち上がった。

 

「連絡するよ! 今度みんなも集めて飲み会開こうと思ってるんだ、同窓会とあたしの結婚報告を兼ねて!」

「おっ、いいねぇ」

「絶対来て! じゃあ頑張ってね、職探し」

 

元気いっぱい手を振る李香の膝の上で、スカートが翻る。さっきの女子高生たちのように、軽やかに。

 

容姿は私とどっこいどっこいで、太っていたことがコンプレックスで、短大時代は「彼氏イナイ歴年齢とイコールだよ、どうしよう」って毎日のように言っていた李香。

 

そんな李香が、今は私とはまったく違う明るい人生を歩んでいる。

 

私が、短大の保育科を出ながら保育士にならなかったのは、実習で自信を無くしてしまったからだ。まったく自分の思い通りにならない子どもという生き物、好き勝手なクレームをつけてくるモンスターペアレント……。

 

現実の厳しさは、周りから聞いて知ってたつもりだけど、いざ目の前のこととなると、あっという間にうちひしがれた。

 

私は、それぐらい弱い人間だ。

 

もし、保育士になってたら、今みたいなことにはなってなかった……?

 

そう単純なものではもちろんないだろうけれど、李香のせいで考えてしまう。

 

あの時、ああしていたら、こうしていたら、あの道を選んでいたら……。

 

“if”の向こうの世界は絶対的に遠い。

 

 

 

 




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