フェイク・ラブ 第四章〜Iori〜<第22話>

2014-07-25 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,068 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Iori フェイク・ラブ 連載小説


 

JESSIE

 

<22回目>

 

後の祭りって言葉があるけれど、最近のドリームガールは出勤しても、お祭りの後みたいだ。

 

年末年始の大フィーバー、出勤したら必ず3本4本ついて帰れる、それは毎年のことでどの店でもそう。でも所詮年末年始フィーバーなんてお祭りで、終わったら元通り、いや元の状態以上の暇な時期が、だらだら続く。

 

いつものカフェに行ったら、なんと改装中。

 

他にこの辺りで深夜までやっているお店といえば、24時間営業のハンバーガー屋ぐらいしかなく、価格が安い故に、ガキんちょで溢れた騒々しい店内に長居するのは耐えられない。

 

だから仕方なく店長に電話し、今日は車待機にしてもらった。

 

それだけでもついてないのに、冨永さんのワゴンに乗って3時間、未だ仕事がついていない。

 

睡眠不足だから寝れると思ったけれど、お茶を引くかもしれないという恐怖が眠気に歯止めをかけて、眠いのに眠れない。そんなイライラ状態で仕事を待つ。

 

ずっと新宿中央公園の前で待機していて、ようやくシティホテルに入っていた他の女の子を迎えに行くため、車が動き出す、すぐ止まる。ガラスを突き抜けて車内に入ってくる、シティホテルの看板を照らす白い光が眩しくて目を細める。

 

「この後すぐ他の子の迎えで3乗せになるんで、はるかさん、後ろに乗ってもらえますか」

 

冨永さんの声とほぼ同時にドアが開き、細長い体を折り曲げてはるかさんが車内に入ってくる。あたしも背、高いほうだけどもっとありそう。172cmはあるんじゃないのか。

 

「お疲れ様です」

 

挨拶と会釈をされ、慌てて返す。

 

車待機or自宅待機で、女の子同士の交流がほとんどなく、挨拶すらしない子も多い店だけど、珍しく礼儀正しい。結構歳もいってそうだからかな。

 

はるかさんは年末に入ってきた新人で、まだ一度も挨拶以上の会話をしたことがない。まぁ、別に積極的に仲良くなろうとは思わないし、その必要もないんだけど。

 

「次、中野まで女の子迎えにいきまーす」

 

すぐに車は走り出す。

 

迎え、迎え、また迎え、迎えばっかり。あたしの仕事の指示はいつ来るんだろう?

 

暇な日が続くと、どうしても苛立つ。貧すれば鈍する、お財布の中身が寂しいと心の余裕も失われる。

 

中野のこぢんまりしたマンションから出てきたのは、奈々子だった。

 

 

 




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