ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第11話>

2014-10-04 20:00 配信 / 閲覧回数 : 906 / 提供 : 松本梓沙 / タグ : ブーティー・ギャング・ストリッパーズ 連載小説


 

JESSIE

 

<第11回>

 

「あれ、あんたは確か昨日……」

 

受付の男は怪訝そうに柊太郎を見やった。

 

「いつの間に入ってたの?」

 

柊太郎は今ここにいる理由と、これまでに何があったかを簡単に説明した。

 

「昨日は本当にすみませんでした。俺、こういうところ初めてで、何が何だかわからなくなっちゃって……」

 

「アタシはいいんだけどさ。柾さん、というか他のダンサーだって驚かれるのは慣れてるし、別にそんなに気にしすぎることはないよ。ああいう言い方をしたのは、もっとひどい奴がいるからだし」

 

受付の男は本当に特に気にしているようでもなく、あっけらかんとしていた。

 

「それにしても災難だったわね」

 

訳知り顔で言われたが、柊太郎のほうは起こったことを報告しただけで、どうしてこんな状況になったのかまったく理解できていない。

 

「あの、結局どういうことだったんでしょうか。俺、今イチよくわからないんですが……」

 

男は柊太郎を若干憐れむように眉をひそめて、「あぁ」と頷いた。

 

「その、さっき飛び出していった奴は柾さんが育ててた新人よ。正確には新人候補というか、新人候補『だった』わけだけど」

 

「新人候補ですか」

 

そこまでは柾とミシェルのやりとりで何となくだが掴めていた。

 

「自分から『やりたい』って入ってきたわりには、最初から文句の多い奴ではあったんだけどね。それが、新人を育てるとなると特に厳しい柾さんに付いちゃったから……まぁ、こうなるだろうとは思っていたわ」

 

「ここはそんな弟子入りみたいな制度があるんですか」

 

「大々的に募集しているわけじゃないけど、ときどき自分から『入れて下さい!』って来るのがいるの。そのときに人員に余裕があれば育てるようにしているのよ。といっても残るのは五人に一人程度ね。ショーのクオリティを落とさないために徹底的に鍛えるから」

 

「五人に一人ですか……」

 

その割合から考えると、ここは自分がいた体育会以上に厳しいのではなかろうか。

 

もっといろいろ尋ねてみたかったが、話はそこで終わった。ショーの開始を前に、次々客が入って来たからだ。

 

昨日とは違って女性客も多い。同じ会社らしい人々と連れ立って来る者もいれば、女性同士で騒ぎながら来る者もいる。

 

柊太郎は自分からその場を離れてバーカウンターに戻った。

 

 

ショーの内容自体は昨日と同じだったが、昨日ほど「ぎらついて」いない気がした。

 

最後のプライベートダンスタイムはなかったが、最前列の女性客たちはダンサーたちがステージの前面にやって来るたびに歓声を上げたり、声を赤らめたりした。彼女たちが昨日のプライベートダンスタイムを見たらどう思うだろうと、柊太郎は二杯目のオレンジジュースを飲みながらぼんやり考えた。




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