泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第35話>

2014-12-17 20:00 配信 / 閲覧回数 : 784 / 提供 : 東京独女スタイル / タグ : Chii 泡のように消えていく… 連載小説


 

JESSIE

 

<第36回>

 

「もう、痛くない? 大丈夫?」

 

「痛いですけど、平気です。我慢できないほどじゃないから」

 

「ねぇ、どうして処女なのにこんなところで働こうって思ったの? 見たとこ知依ちゃん、真面目そうだし。よかったら、聞かせてくれない?」

 

初めてわたしの体を必要としてくれた成田さん。こんなに本気で自分を求めてくれた誰かは、今までいなかった。だからわたしは素直に口を開く。

 

「すごく好きだった人がいたんです。隣の家のお兄ちゃんなんだけど。ほんとに小さい頃から、いつからかよくわかんないぐらいちっちゃい頃から、好きで好きでたまらなくて。すっごく好きなのに、何もできなくて……。その人、今度結婚するんです。しかもできちゃった婚」

 

告白ひとつできなかったくせに、性欲というものすらもまだよくわかっていないのに、いつかそういうことをするなら、最初の相手は竜希さんだって、決めていた。

 

絶対に叶えたい夢が絶対に叶わない夢になって、一刻も早く処女を捨てなきゃと思った。

 

だって、処女でいる限りわたしは竜希さんを思ってしまうだろうから。叶わない夢を追いかけてしまうだろうから。

 

たとえ竜希さんに由実さんがいても……。

 

バージンをもらってくれる相手を探すため、ナンパ待ちをした。出会い系サイトに書き込みした。

 

そういった処女を捨てるための活動を、ヒショカツ、と名付けた。非処女活動、略してヒショカツ。

 

婚活とか恋活とか妊活とか朝活とか、今どきの流行語のように言葉だけなんとなく軽くしてみたら、大きく重くなり過ぎた思いも軽くなれるんじゃないか? って……。

 

実際、あんまり効き目はなかったんだけど。

 

「普通に彼氏を作ろうとは思わなかったの? 知依ちゃん、若いんだし。出会いもたくさんあるでしょう」

 

「無理なんです、それじゃあ。ちょうど、大学の同じゼミの人で、好きって言ってくれた人がいて。何回かデートもしたけど……。お断りしました」

 

 



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