泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第46話>
<第46話>
「ねぇ、ハルくんこれ、どういうことなの? なんで松木さんがハルくんの家にいるの? 2人、知り合いだったの? 松木さんをこんなところに隠すなんて、2人が知り合いだってことをそんなに秘密にしたかったの?」
「えーとな、園香、これは……」
「ハル。そのブス、もう解放してやれよ。こうなっちゃ言い訳できねーよ」
ブス、というのが自分を差しているのだと理解するのに、数秒かかった。
なんだよ、とハルくんが目を吊り上げる。
「なんだよ! お前が余計なことすっから言い訳できなくなったんじゃん」
「どっちみちそのブス、もうお払い箱だよ。稼げねーんだもん。もっといい女見つけてこようぜ」
「ま、それもそうか」
「いったいどういうことなの、ハルく……」
10センチ以上高いところにある整った顔を見上げて、凍り付く。
わたしに向けられる視線はぞっとするほど冷たい。いつも優しく温かく、宝物を見つめるようだった切れ長の瞳が、今はゴミでも見ているみたいだ。
「こいつはね、社長の親なんかいないの。そもそも大学生ですらねーし」
松木さんが面倒くさそうに言った。
ハルくんと同じく、松木さんもわたしへの態度をコロッと変えてしまった。キャバクラでデートクラブの話を持ち出してきた時のような、年頃の女の子に対する丁寧さがきれいさっぱり消えている。
「ハルの仕事は女の子を捕まえてはキャバクラなり風俗なり、夜の世界へ送り込むこと。その売上は上に入る」
「上?」
「会社だよ、会社。もちろん君が想像しているような会社とは全然違うけど。組織的なポン引きってやつだな」
「ポン引き……?」
「あー君、真面目そーだもんな。ポン引きも知らねーか。要は、アレだよ。世の中には女の好意を利用して、実家が大変だとか病気だとか、適当な理由つけて夜の仕事をさせて貢がせる、そういう男がいるわけよ。ど、勉強になった?」
完全に見下した口調で言われて、言葉が出てこなかった。
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