泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第45話>
<第45話>
『俺は本音では、風俗なんてなくなればいいと思ってる。あいつを殺した奴だけじゃなくてすべての客が憎いし、体を売らないと生きていけない女がいる世界なんて、きっと何かが間違ってるんだ』
「……うん」
『でも、だからって風俗がなくなることはないよな、今までも、これからも。だったらせめて、この世界に関わった人に誰も不幸になってほしくない。そんなこと無理だろうけれど、自分にできることはやりたい』
小さく頷くと、また少し強い風がふわりとわたしの髪を巻き上げた。
まだどこにも咲いていないはずの桜の花びらが風に舞った気がして、目を見開く。ほんの一瞬、大きな頼りがいのある手に抱かれているようなぬくもりが、肩を包んだ。
「絶対、いい店作ろうね」
『沙和……? 声、震えてるぞ。泣いてるのか?』
「泣いてないよ」
『泣いてるだろ』
「泣いてるってば」
子どもみたいにムキになって否定する。
頬に流れたままの涙は拭わないで、彼のいるところから吹いているんだろう、春の匂いのする風が乾かしてくれるのを待った。
泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<完>
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