シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第11話〜

2015-08-01 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,067 / 提供 : ヴィクトリカ・ゾエ・キレーヌ / タグ : ヒモ 連載小説 <叫び>


 

男の見分け方

 

<第11話>

 

自分だって金に困ってるくせに、俺今月厳しいんだよーと泣きつかれれば、相手を疑うことなくホイホイお金を貸してしまう。当然、証書なんてない。だから、常に貧乏。

 

 

挙げ句の果てには借金の保証人にまでなってしまい、結果、アッサリ相手に逃げられてしまったと泣きついてきた時には、さすがのあたしもぶちキギレた。

 

「なんで保証人になんかなっちゃうのよ!! こういうの絶対ダメだ、金貸せ言う奴は信用するなって、親に教わらなかったわけ!? だいたいてめぇはいつも考えなしに動くし誰でもヘラヘラ信用しちまうし、人がいいにもほどがあんだろが、この万年インディーズ野郎!!」

 

溢れる感情に任せて殴っていた。

 

むろん、パーでなくグー。

 

まさか自分がDVに手を染めるとは……。

 

いやはや、人生何が起こるか分かったもんじゃない。

 

「ごめんなさい……」

 

信じていた友だちに裏切られ、200万の借金を押し付けられ、あたしに殴られ、啓太はメソメソと泣いた。

 

そう、啓太はよく泣く。

 

白血病の子どもが死ぬドラマを見ては泣き、バンドのメンバーに書いた曲をけちょんけちょんにけなされては泣き、バイトで失敗して店長に怒られたと言っては泣いた。啓太ほど泣く男を、あたしは見たことがない。

 

「200万でしょ? 返せない額じゃないじゃない。これぐらいで自己破産するっていうのもアレだし、ちょっとだけ無理すれば……」

 

「でも、今の生活じゃ、そのちょっとの無理も、無理じゃない?」

 

言われなくたってわかってる。

 

この時既に同棲生活を始めていたあたしは、派遣OLの薄給で啓太の生活の面倒を見ていた。

 

啓太がバンド活動を辞め、深夜のコンビニバイトでなく昼間も働くようになれば、200万ぐらいすぐ返済できるかもしれない。

 

 

 



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