シリーズ「叫び」エピソード4 アンダー〜第1話〜

2015-08-20 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,212 / 提供 : ヴィクトリカ・ゾエ・キレーヌ / タグ : アンダー 連載小説 <叫び>


 

JESSIE

 

<第1回>

 

こつこつ。やる気のなさ丸出しのノックをすると、レンタルルームのドアが10cmぐらい開いた。

 

細い目があたしを睨みつける。

 

禿げ上がった額には深い皴が寄っていて、不快感を隠そうともしない。

 

「えーと、美弥ちゃん?」

 

「はい。成木さんですよね」

 

本名だかどうだか知らないけれど、お店から伝えられた名前を言う。互いに本人確認が済んだところで、成木さんは渋い顔のままドアを50cmほど開けてくれた。

 

「とりあえず入って。早く」

 

いつ、隣の部屋の客が出てきて一緒にいるところを見られるか、あるいはシーツの塊片手に掃除の従業員が通り過ぎるか、わかったもんじゃないレンタルルーム。どうせみんな同じようなことをしているのに、誰にも自分がここで女を買っていることを知られたくないんだろう。

 

バカバカしい自意識過剰が、急かしてあたしの背中を押す手に表れている。

 

鍵を自分の手でしっかりと閉めた後、成木さんはすぐに携帯を手に取った。50歳は超えてると思うけど、シルバー仕様じゃない、今どきのスマートフォンとかいうやつだった。

 

「あのさー、写真と全然違うんだけど? どういうこと? チェンジできないわけ?」

 

どうも、お店に電話しているらしい。要はあたしがあんまりブサイクで気に入らなかったんだろうが、ここまであからさまに、しかも女の子の目の前で、お店にチェンジ要求をする人も珍しい。

 

うちの店では、パネルマジック、通称パネマジは普通。お店に出す写真はプリクラで構わないし、最近のプリクラは美肌加工もデカ目加工もお手の物。しかもお店のパソコンにだって最新の技術が詰め込まれた画像加工ソフトが入ってるんだから、あたしみたいなブサイクだって写真指名が取れるぐらいの美少女にはなれる。

 

本物の美少女だったら、もっとサービスが軽くてバックのいい店で働けるんだけどな。小さい頃から何度も、「ごめんね、あたしに似なくって。あんたの父親、本当にブッサイクでさぁ」とお母さんに謝られてきたあたしの顔は、目は離れ過ぎてるし、鼻は低過ぎるし、口は大き過ぎるしで、いいところがひとつもない。

 

こんな顔じゃなかったら、バックが安い上、本番はもちろんクスコから鞭からビンタから放尿(かけるほうじゃなくて、主にかけられるほう)から、何から何までOKの店で働いていない。

 



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