タランティーノが狂喜したアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の最新作『スガラムルディの魔女』を見てきました!
クエンティン・タランティーノが絶賛の新進気鋭の監督の最新作は…!?
幼いころに絵本で読んだ魔女の多くが、邪悪で恐ろしい存在だった。主人公たちを脅かし、世の中の秩序を破壊して、混乱へと導くのが魔女たちの役目だったからだ。しかし、そもそも世の中自体が正しくないとすれば、正しい姿――男たちに都合のいい社会から、女が自分の欲望を思う存分に解放して生きられる世界――へと導こうとする魔女は、女の味方である。
ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品作『気狂いピエロの決闘』(10)で監督賞&脚本賞をダブル受賞。審査委員長のクエンティン・タランティーノを狂喜させた、スペインが誇る型破りな才能の持ち主、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の最新作『スガラムルディの魔女』はサスペンスホラーでありながら、男と女の本質がシニカルに描かれている。
舞台はスペイン。白昼のマドリードで、イエス・キリスト、兵士、透明人間、スポンジ・ボブ、ミニーマウスのコスプレをした大道芸人に成りすました5人組の強盗団が、宝飾品買い取り店を襲撃する。杜撰な計画ながら、金の指輪を強奪することに見事成功したものの、警察に追われることになった強盗団のリーダーのホセは、幼い息子のセルジオと、兵士に扮した若い男アントニオとともに、偶然通りかかったタクシーに乗り込み、逃亡のため、国境へと向かう。
最初は揉め合う一行だったが、離婚した元妻からの電話で、ヒステリックに罵られたホセが、その妻との生活がいかに苦痛であったかを訴えたことで、完全上位の恋人を持ち、いつも肩身の狭い思いをしているアントニオ、同じく家庭に不満を持つタクシー運転手のマヌエルと意気投合。三人で逃げ切ることを誓い合う。
しかし、途中、『スガラムルディ』という魔女伝説のある村に差し掛かったことで物語は急変する。そこで三人を待ち受けていたのマリーズ、グラシー、エバという母子三代の魔女とその一族だったのだ。
自分たちが「理解できない」ことを理由に、女を恐れて逃げ惑う男たちvsそんな男に苛立ち、ヒステリックに怒り狂う女たち。しかし、怒るのはまだ「理解をし合いたい」という歩み寄りの姿勢と「理解し合えるのではないか」と期待する心があるがゆえのこと。男という存在そのものを切り捨てた魔女たちにとっては、男はただの“喰い物”でしかない……はずだった。が、エバが“喰い物”でしかないはずの男、ホセに恋をしたことにより魔女たちの間に亀裂がはしる。さらには、村に警察とホセの元妻が乗り込んできたことで、さらに事態は混迷を極め――。
エバは魔女として生きることを選ぶのか、それとも魔女を辞めて男と理解し合い、共に生きる道を選ぶのか、いや、女が理解を望んだところで、そもそも男は女を理解することなど出来るのか――。日頃、男性のだらしなさに辟易している、コミュニケーションに絶望している女性ほど、ラストに考えさせられるのではないだろうか。
白髪ざんばら髪の祖母マリーズ、隙のなさすぎるエレガンスな装いの母グラシー、そして刈り上げヘアにパンキッシュなレザースーツを身にまとった娘エバ。男への媚を手放した魔女たちは、自らのためだけに装っている。
■『スガラムルディの魔女』
(c) 2013 ENRIQUE CEREZO P.C., S.A.- LA FERME PRODUCTIONS-ARTE FRANC ECINEMA
■公開情報
11月22日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
公式HP http://www.shochiku.co.jp/iglesia/
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