Yuuna〜風俗嬢の恋 vol.3〜<第5話>
<第5話>
休憩室に入った途端、さおりさんとまゆみさんと富樫さんの顔を見たら突っ張っていたものがはじけ飛んで、涙が溢れてくる。
「やよいちゃん? 大丈夫!?」
三人とも慌てて駆け寄ってくる。
ほんの一瞬でも、そこに本物の愛情がないんだとしても、人の優しさがとにかくありがたくて、まゆみさんにしがみついて泣いた。泣いて泣いて涙が出るだけ出てしまってちょっと気が済んでから、わけを言った。あぁ、とまゆみさんが頷く。
「嫌だよね、ねちっこいのが一番。わかる。あたしも、未だにトリハダたつもの、そういう人」
「キスされるのが嫌ならこの店やめなよ」
さおりさんの冷ややかな声がした。顔を上げると、さおりさんは呆れたような、軽蔑するような目であたしを見下ろしていた。
「やよいは、ハンパなんだよ。キスがダメとかオヤジがダメとか、そんな甘ったるいこと言ってるならファミレスでバイトでもすれば?あ、無理か。あんたすっトロいもんね、ウエイトレスなんて務まらなさそう」
「ちょっと清美、そんな言い方って」
まゆみさんがつい、さおりさんを本名で呼んだ。さおりさんはどうでもいいって顔をしてトイレ行ってくる、と休憩室を出て行く。富樫さんに早上がりするかと聞かれ、首を縦に振った。富樫さんは優しい。さすがは店長、こういう仕事をしている女の子の心の動きをよくわかっていると思う。わかっているけれど、同情はしてくれない。
さおりさんの言うとおりだ。あたしは風俗嬢に向いていない。
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