泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第1話>

2014-12-22 20:00 配信 / 閲覧回数 : 983 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Urara 泡のように消えていく… 連載小説


 

セルフ潮吹き

 

<第1話>

 

ボンレスハムみたいな2本の腕は、中身はほとんど脂肪のはずなのに、なぜかしっかり固くて、想像以上の力でわたしをぎゅうぎゅう締め付けてくるから、ちょっと、いや結構、苦しい。まるで脱水される洗濯物の気分。

 

「んっはぁ~、うららちゃんイイ、マジいい、このオ○ンコ、世界一ぃ~」

 

上からわたしを組み敷いた水村さんが、マシンガンのような勢いで腰を動かして、お世辞にも寝心地がいいとは言えないベッドがぎしぎし、悲鳴を上げている。

 

でもそれ以上に水村さんの声がすごい。個室の壁は分厚いけれど、廊下にも隣の部屋にも、3階にも聞こえてると思う。それにしても体重0.1トンを超えるというこの巨体に、こんなに激しくピストンできる素早さが備わっていることが、すごい。

 

2週間に一度のペースで通ってきてくれる水村さんは、髪の毛がまだらに剥げていて、お風呂に入った後も顔が脂っぽくて、汗っかきだから、プレイ中にだらだら、ねばっこい汗がわたしの顔に落ちてくる。時々、口に入ったりもする。水村さんの汗は塩辛くて、ちょっと苦い。

 

水村さんとセックスしている時は、ううん、他の人の時もだけれど。わたしは自分に暗示をかける。

 

目の前のこの人は、颯太くんなんだと。

 

「接客中は、客のことは俺だと思えばいいんだ。どんなにデブでもハゲでもキモくても息が臭くても、俺なんだって自分に言い聞かせるんだよ。大丈夫、お前なら出来る」

 

断末魔のカエルみたいな醜い喘ぎ声を上げているこの人は、脂ぎった汗のシャワーをわたしにかけているこの人は、全身脂肪だらけでのしかかってきて苦しい思いをさせるこの人は、颯太くん。薄く開けた瞼の隙間から見える、快楽にだらしなく緩み切ったその顔は、顎がシュッと尖ったキレイな顔とは似ても似つかないけれど、颯太くん。

 

何度も何度も自分に言い聞かせていたら、不思議なことにわたしの中心は颯太くんに接しているみたいに、じゅわっと熱を持ち、潤う。颯太くんに触れられているように、火照った全身の肌が敏感になる。嘘じゃなくて、演技じゃなくて、ちゃんと気持ちいい。

 

はじめましてってした時は、どんなに、わー、またキモいオッサンだ、嫌だなーって思ってたって、いつしか颯太くんの背中に腕を回しているつもりでお客さんにしがみつき、AV女優ばりの声で喘ぐことができるんだ。

 

愛の力は、すさまじい。

 




カテゴリー