泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第22話>

2015-01-12 20:00 配信 / 閲覧回数 : 928 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Urara 泡のように消えていく… 連載小説


JESSIE

<第22話>

通話が切れた後も、胸の中はほかほかあったかい。さっきまであんなに苦しかったのが嘘みたい。ほらね、いつも嫌なことの後はちゃんといいことがある。どんなことがあっても颯太くんが傍にいてくれるわたしは、世界一の幸せ者だ。

 

「ほーんと、いいご身分だね。さっきまで過呼吸でヒイヒイ言ってたのに、その直後に彼氏と電話して鼻の下伸ばしちゃってさ」

 

雨音さんの意地悪に文字通り冷水を浴びせかけられたようで、胸の中のほかほかが少し冷めてしまう。

 

「わたし、鼻の下なんか伸ばしてないもん!」

 

「うららちゃん。今のは彼氏さんから?」

 

すみれさんが身を乗り出してきた。いつになく真剣な面持ちで、きっちり正座までしている。

 

「そうだけど?」

 

「お金、貸してくれって言われたの?」

 

「うん」

 

「いくら?」

 

「50万」

 

「50万……」

 

知依ちゃんが大袈裟に目を見開く。50万ぐらいで何、って言おうかと思った。真面目なのはわかるけど、50万ぽっちでこの反応って。よほどヌルい人生生きてきたんだろう。

 

「なるほどね。ソープ嬢なら出せない額じゃないし、すぐ作れる程度の金か。騙すにはちょうどいい金額設定じゃない?」

 

「雨音さん! だから颯太くんは、騙したりなんかしないんだってば!」

 

「ねぇ、うららちゃん、本気で彼のこと信じてるの? ほんとはおかしいなって思ってて、騙されてるの気づいてて、それでも信じたくて無理やり自分を納得させてるんじゃない? 信じないと、うららちゃんを支えてるものがなくなってしまうから」

 

すみれさんが熱っぽく語り出し、わたしはそっぽを向いて携帯をいじる。颯太くんへのメール、打たないと。

 

「ダメよ、いい加減に現実を見なきゃ。現実を見る勇気を持たなきゃ」

 

無視無視。すみれさんの言うことなんか、右から左だ。心をカリカリ、引っかかれるような感じがするけれど、気のせいだもん。

 

「今か潮時なのよ。ここで言う通りお金を出したら、彼はもっとつけあがる。お金を要求してくる男なんて、優しい顔した借金取りみたいなものなのよ」

 

知らない。すみれさんの言うことなんか、知らない。あーもう、集中力が乱されるから、絵文字間違えちゃったじゃん! ここにハートじゃなくてドクロマークとか、おかしいし。

 

 




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