トーキョー’90クロニクル vol.2『16歳のわたしが一番欲しかったもの』
16歳だったわたしが一番欲しかったもの。それは『ポケベル』
16歳のわたしが一番欲しかったもの。
それはミ・ジェーンの花柄レギンスや、裾にレースのあしらわれたピンクフラミンゴのデニムショートパンツではなく、もちろんトパーズの指輪や、そして彼氏でさえもなく、ポケットベル。
通称ポケベルと呼ばれる小型の無線受信機でした。
まだ携帯電話は高価であり、ほとんど普及していなかった当時、東京の高校生たちが、互いに連絡を取る手段といえば家電や公衆電話、そしてポケベルしかありませんでした。
今となっては、ポケベルなど、その実物すら見たことがない、という方のほうが多いと思います。
なので念のために、使い方を説明すると、電話回線から相手の持っているポケベル番号に発信。すると、その相手の液晶端末に、自分の番号が通知されるという仕組みです。
が、しかし、当時の高校生の間では、また違った使い方がなされていました。数字を使ってポケベル上で会話をする文化です。
今でいうLINEやSMSのようなものでしょうか。しかし、むろん、ポケベルは数字しか表示できないので(ただし、数年後には、このニーズを汲んだ、日本語表示が出来るポケベルが発売されます)、このような形です。
オハヨウ→084-
オヤスミ→0833
イマドコ→10105
アイタイヨ→11014
アイシテル→114106
数時の0をローマ字のOに見立てたり、1をIに見立てたりと、工夫を凝らして送られてきたメッセージに返事を打ち返えして会話をするのですが、チリも積もればなんとやら。1回10円といっても10回で100円、それを月額に直せば3000円です。
さらには、ポケットベルの使用料自体が月額2000円程掛かるとなれば、お小遣いが一万円だったわたしには痛い出費です。
が、正直、バイトだってしているし、それくらいのお金はなんとかなる。しかしなんとかならないのは、母親の同意です。
ポケベルがない…。そのことで味わう疎外感
「ポケベルが欲しい」というわたしに、最初は「ポケベルなんて大人が持つものでしょ? 何に使うの?」と首を傾げていた母親でしたが、マスコミが女子高生ブームを囃し立てるにつけ、「ポケベルなんて持ったら非行の第一歩。うちは持たせません!」と次第にその態度は頑なに。
が、学外に新しい友達が出来ても、街でナンパされても、合コンにいっても、ポケベルがなければ、教える連絡先がないのはツライ。
「家電があるじゃないの!」と言われても、「そうじゃない。もっとライトに連絡が取れるプライベートなツールが欲しいんです、お母さん」。
そんなこんなで「どうしたらいいんだろう……」と思い悩んでいたある日のこと。
制服姿で池袋のサンシャイン通りを歩いていると、道端でキャッチをしている男性に話しかけられたのです。
<Vol.3>に続く
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