トーキョー’90クロニクル vol.5 「女子校生、放課後の居場所はデートクラブ」

2014-05-15 16:00 配信 / 閲覧回数 : 1,439 / 提供 : 大泉りか / タグ : 90年代 コギャル 女子高生 東京


 

マジックミラー越しに観察されるデートクラブで過ごす時間と私の欲望

 

上の世代の大人たちが『バブル』と呼ばれた好景気に浮かれる姿を見てきたわたしたちは『巨大な欲望』をうちに抱え、青春を迎えました。

 

シャネルのサングラス、MCMのショルダーバッグ、グッチのサンダル。いま思えば16〜17歳の少女が持つようなものではない。

 

しかし、わたしたちの欲望は、メディアによって煽られるとともに、ストリートで見かける、グレーのタイトスカートが妙に大人びて見える慶応女子校や、プリーツスカートでさえあれば、色や生地などは自由な青学に通う生徒たちが身につけている[母親から受け継いだ][家族でハワイに行った際に買って貰った][両親からの誕生日プレゼント]のハイブランドの鞄や靴やアクセサリーを、自分たちも手に入れたいと切に願っていました。

 

手をほんの少し伸ばせば手に入りそうで、けれども、届かないその場所。そこにたどり着けばければ問題はなかったのかもしれません。が、たどり着くための抜け道はあった。女子高生デートクラブです。

 

JESSIE

 

16歳の少女がたどり着いた先「女子高生デートクラブ」

 

当時、女子高生デートクラブというものが、渋谷にも新宿にも池袋にも、吉祥寺にだってありました。

 

雑居ビルやマンションの一室にある、マジックミラーで仕切られた小部屋の中は、ジュース飲み放題、お菓子食べ放題で雑誌も読み放題。そこに集まる同世代の少女たちと、化粧直しをしながら世間話をして暇を潰して客の来店を待ちます。

 

そして、客はマジックミラー越しに少女たちを値定めし、気に入った子がいれば、受付にその旨を伝えて外の待ち合わせ場所へ。指名された少女は客が退店した後、受付に呼ばれ客の支払った『交通費』と呼ばれる五千円ほどの金銭を受け取ります。

 

待ち合わせ場所で客の男性と合流した後は、カラオケに行くなり、喫茶店でお茶をするなり自由です。

 

もちろん、ホテルに行くことも。ただし、何もしなくても、30分かそこらお茶をするだけで、五千円貰えるのですから、ホテルに行ってセックスなどせずとも、ファーストフード店で一日働くくらいの日当はすぐに稼げます。

 

しかし、人間の欲というものは無限です。最初は五千円の『交通費』で満足していても、だんだんともっと欲しくなる。あと五千円あれば、MACのリップが買える、もう五千円でカルバン・クラインのエタニティー、さらに一万円あればプラダのポーチが。

 

まるで腹ペコにお腹を空かせているかのように、わたしたちは欲望を満たすことに飢えていた。

 

いくら食べても食べても満足しない、出来ないわたしが、次の段階に上がる……もしくは墜ちるのは、ほんのひょんなきっかけさえあれば、十分だったのです。

 

 

 




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