【映画レビュー】壮絶な耽溺!『ニンフォマニアック』

2014-10-17 16:00 配信 / 閲覧回数 : 2,435 / 提供 : 大泉りか / タグ : ニンフォマニアック 大泉りか 映画レビュー


 

 

話題の映画『ニンフォマニアック』を見てきました

 

Wikipediaによると“逸脱”とは『平均的な基準からの偏向の総称のこと。一般には、単に統計的な意味で出現頻度のごく少ないという意味にとどまらず、その上に「ルールから外れた望ましくない」という道徳的裁定が込められる』とある。

 

ということは、“性的逸脱行動”とは『平均的な基準から偏向した行為』、『ルールから外れた道徳的に望ましくないセックス』ということになる。が、しかし。そもそも、セックスという至極プライベートな行為に於いて、なにを基準に置いて、どうやって測るのか――

 

ニンフォマニアック

 

 

毎度、スキャンダラスなテーマで物議を醸し出すラース・フォン・トリアーの最新作、『ニンフォマニアック』は、シャルロット・ゲンズブール演じるジョーという“色情狂”の女性のセックスに塗れた生涯を綴った一代記である。

 

物語は、雪の降る路地で気を失っているヒロイン・ジョーを、偶然通りかかったインテリの紳士、セリグマンが自宅に連れて帰り、介抱するシーンから始まる。セリグマンに素性を問われたジョーが語り始めたのは、セックスに塗れた数奇な人生――全8章に渡るこのストーリーのCHAPTER1『魚釣大全』では、17歳のジョーは女友達とともに、電車内での逆ナン即抜きゲームに耽り、CHAPTER3『H夫人』では複数いるセックスフレンドのひとりである既婚者との不倫セックスの果ての修羅場に巻き込まれる。

 

CHAPTER5の『リトル・オルガン・スクール』では、自らのセックス依存をコントロールするために、毎晩7~8人の男との情事を重ねて、CHAPTER6『東方教会と西方教会(サイレント・ドッグ)』では、非合法のSMセラピーに傾倒する。時にコミカルに、時にシリアスに描かれるジョーの性的冒険は、確かに一般的に『色情狂』『性的逸脱』とされるものに違いない。が、この物語の中でジョーだけが『平均的な基準からの偏向した、望ましくないセックス』をする存在なのか、というと、それもまた違うように思える

 

ジョーに電車内の男を“釣る”ゲームを提案する幼なじみのB、“前から3回、後ろから5回”突くだけという乱暴なセックスでジョーの処女を破うバイク好きの若者J、道端でたむろしているところを誘われて、言葉も通じないジョーと3Pを試みようとするアフリカ系の男性の二人組、そして、劣悪な環境から救い出してくれたジョーに肉体を差し出す少女P。誰もがセックスに於ける大義名分である“愛”などとは関係のないところで、性と戯れている。ジョーだけが逸脱した色情狂だというのならば、それらの人物との垣根は、そして貴女との境界線はいったいどこにあるだろうか――その答えは衝撃のラストで示されたように思った。

 

 

 

(C)2013 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31 APS, ZENTROPA INTERNATIONAL KOLN, SLOT MACHINE, ZENTROPA INTERNATIONAL FRANCE, CAVIAR, ZENBELGIE, ARTE FRANCE CINEMA

 

現在公開中の『ニンフォマニアックVol.1』ではジョーの性の目覚めから処女喪失、そして20代までの性的冒険を、11月1日から公開される『ニンフォマニアックVol.2』では中年になったジョーが性感を失い、3PやSMなどさらに性の深淵へと踏み込んでいくとともに、その放蕩の代償による苦悶が描かれいる。

 

『ニンフォマニアック Vol.1』

監督/脚本:ラース・フォン・トリアー

出演:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、クリスチャン・スレイター、ユマ・サーマン、ソフィ・ケネディ・クラーク、コニー・ニールセン

 

『ニンフォマニアック Vol.2』

監督/脚本:ラース・フォン・トリアー

出演:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、クリスチャン・スレイター、ジェイミー・ベル、ウィレム・デフォー、ミア・ゴス、ジャン=マルク・バール、ウド・キア

 

『ニンフォマニアック Vol.1』 は10月11日(土)から公開中、『ニンフォマニアック Vol.2』は11月1日(土)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほか全国順次公開

 

 




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