風俗嬢の辞め時と恋愛<その1>
コールガールのロマンスおとぎ話
振り返れば、「あの状況で、よくコールガール業を辞められたよなー」って思う。私が足を洗うきっかけとなった話を、今回はお送りしたいと思います。
偶然が重なるプチラブストーリーをお送りします。……で、思わせぶりな話で終わらせようと思っていたけど、たった今ふと思い出したクソみたいなエセラブストーリーも照れ臭いけれど、後半お送りしますね。
私が渋谷区円山町を中心にコールガール活動を行っていたのは、26歳から29歳8ケ月まで。OL&ライター&出張風俗嬢という3足のわらじの仕事を保ちながら、「目標は、35歳くらいまで健康美容保っていろんな人と楽しくSEXして、不動産投資でもすれば、50歳で隠居生活も夢じゃないよねー」なんて考えていた。
全部上手くいき続ければ……の話ではあったが、かなり地道に、そしてリアルな計画だった。その上、それをやり続けることで何不自由もないから、続けない理由がなかった。
生活にも遊ぶにもお金は問題ないし、昼にも夜にも仕事仲間も友達もいる。この頃は両親もピンピンしていたし、松本晶として頼れる父親的な存在の人や風俗ライターのお師匠さんなど人にも恵まれていた……つまり、無かったのは恋愛くらいだった。
婚約者(口約束だけどね)と別れた22歳から、何もかも精力的に物事が上手くいき、現在に至るまで容姿があまり変わっていないので、「私、ひょっとして恋愛しないおかげで歳を取らない魔法にでも掛っているんじゃないかなー?」というのは、正直なところ今でも少し思っている。
客足の低下と高齢化で……
ところがである。29歳になってしばらくして、「もうすぐ三十路。そろそろ自分の為にお金も時間も使いたいし、どうしようかなあ」と考えるようになった。
というのも、この時、不動産投資ファンドの配当金が結構入ってきていて、ガツガツ働きたくなくなっていたのと(この後、1回目の阿部首相大コケで大暴落)、お客さんの絶対数の減少と高齢化が進んだ気がして怖くなった。「稼ぎが悪くなった上、万が一、ご老体のお客さんに腹上死でもされたら厄介だー」って思ったり……ってことです。
風俗を辞めたのは、そんな細かい理由が多いけど、大きなきっかけもあった。それは、2005年、28歳になったばかりの私の身に起こったできごとだった。
平日夜待機の神泉町出撃命令は21時台と早く、店長から、
「晶ちゃん、1本目は渋谷のラブホ「F」ね。でー、その後ホテルニューオー○ニだから、張り切って行こうね♪」
「F」は渋谷のラブホテルの中でも割とキレイで安っぽくないホテルだから、イイ客だといいなあって思いながら、ホテル街を歩き回る。珍しく客単価が3万円70分単位で、店長が数名の連れ風俗客の交渉に乗ったのだろう。労働単価は悪くないが、交渉が入っている“特注仕様”の仕事は余りロクなことがない。90分がノーマルなウチの店を、20分値切ってくる客って解釈もできるからだ。
<次回>に続く。
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