風俗嬢の辞め時と恋愛<その3>
期待を持って待ち続けた日々
この日までの私は、渋谷一能天気なコールガールで、親の不祥事(オレオレ詐欺に巻き込まれたこと)もあり、一層頑張ろうという気合のピークだった。
ちなみに、母親が騙された劇場型オレオレ詐欺のストーリーは、皮肉にも私が借金の連帯保証人になりススキノへ売られる……というものだったらしい。
この仕事をしていると、キチ○イに喧嘩を売られたり、意気がった奴に誘われることは時々あるが、マトモそうな人からその場の勢いでも告白されるというのは経験がなく、嬉しいことだった。その後も、夜の仕事を精力的に続けるものの、もう1度あのお客さんが迎えに来てくれるかもしれない、いやきっとまた来る!」って待ち遠しい気持ちで待機し続けた。
ちなみに、私は全風俗業生活の中でもお客さんと直接連絡先を交換したことはほとんどなく、気になるお客さんはひたすら待つしかなかった。
数カ月しても音沙汰ないので、「あの人は出張で来た人なのかもしれないなあ」と解釈し、更に待ってみたが、結局店を辞めるまで現れることはなかった。身受けに来てはくれなかったけど、この仕事から足を洗う踏ん切りをつける良いきっかけをくれたと感謝している。
昼間の仕事で劇的な再会!?
時は流れて、2008年。季節は夏だったかなあ。
私の昼の堅気の仕事の方で、とある組織設立の事務所開きの手伝いに行ったことがあった。その時、上司である通称「タコ社長」から、出向職員Aさんと一緒に設営と買い出しをするように仰せつかった。出向の人は皆さん部長次長クラスのミドルエイジばかりだったが、ひとりだけパシらされている30代の若手がいたのだ。夏のクソ暑い中呼ばれて何も考えていない状態で挨拶して頭を上げた瞬間に、
「あ、ウソっ……!! 貴殿は……!?」
そう、私が今か今かと待ち遠しく思っていた例のお客さんだった。
なるほど、彼は確かにこの日にT地方から単身赴任で東京に転勤してきたのだった。向こうは気付いてないのか、もしかしたら他人のそら似ということもある。
タコ社長から助っ人依頼がきた時だけ、共に働き、数回一緒に酒も飲んだが、解りやすいアプローチはなく、よく解らないまま今日に至る。1度だけしこたま酒を飲んで家に上がられそうになったこともあったが、私のバツが悪く、生理2日目で引越し荷造り中という史上最悪なタイミング。その時は、「俺は、××電力には戻らないで、君の組織の△△△のエンジニアの仕事に従事したい」
これを遠回しな口説きだったのでは……? と未だに気にしている私は、夢見る夢子さんなのだろうか?
ある日、飲んだ帰りの電車で2人きりになった時、
「君はいつもそうなんだー! 人に頼らないで、1人でなんとかしようとするっ!!」と、突然怒り始めたこともあった。
“いつも”というのはいつの事を指しているのだろうか? それが未だに気になっている奥手な私だった。結局それ以上発展することはなく、彼は出向期間が終了すると、T地方へと帰っていった。
現在震災のせいで、半永久的に下火な某組織。ひょっこり私の職場にやってこないかなあと淡い期待がまだ消えていない私の昔話でした。
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