「現役風俗嬢作家、筆を握り、ペニスを握り…第17回」
<小説家になることを決意し、1度目の結婚>
書き始めたケータイ小説は、意外に好評でした。
「実話」を書いている人、「実話」であることを売りにしている人も多いケータイ小説界ですが、さすがに自分の実話そのまんまは、あまりにも痛々し過ぎて書けません。
未成年の読者(というか、その親ですね)に配慮した、ケータイ小説ならではの表現規制にも引っかかってしまうし。
とはいえ、さすが、子どもの頃から「お話」を書くことを趣味にし、小学校時代からかなりの時間を読書に割いていた甲斐あって、基本的な文章力はあり、読者からそこを褒めてもらうことが多かったんです。
ケータイ小説の良いところは、読者と作者との距離が近く、読者もまた作者であったり、作者もまた読者であったりすること。互いに互いの作品を読みあい、褒めたり、アドバイスし合ったりして、伸ばしあっていける環境がありました。
そんなわけで、「これはイケる!!」と踏んだ千姫は、まもなく活字中毒に。
ケータイ小説だけではなく、本屋さんに足を運んでいろいろな作家さんの本を読んで勉強しました。
ゆえに、一カ月の本代がスゴイことに(笑)。
なので、実はケータイ小説だけでなく、一般の文芸賞にもかなり応募していたんです。(ひとつも通りませんでしたが……)
よって、21才から26才の間は、まったく実社会に出ることなく、「文章修業」と称して、ほとんど引きこもりの作家志望の日々でした。
書いたり読んだり、他のケータイ作家さんと交流したり。ただそれだけで、一日が終わってしまうような。
ちなみに実はこの5年の間で、サックリ結婚もしてます。
「え、いつそんな相手と出会ったの!?」と思われるでしょうが、実は10代の頃から、くっついたり離れたりを繰り返しながらも、腐れ縁を続けている人がいたんです。
「今のまんまじゃあたし、ニートだし。だからって小説家以外の仕事をするのも嫌だし……だったらとりあえず、専業主婦になっちゃえー!!」ぐらいのノリで、25才で結婚。
しかし、関係はまもなく悪化しました……完全にこれはもう、自分のせいですね。
<小説家志望の引きこもりチャトレ、夫との関係も当然悪化し……>
「文章修業」を理由に家に閉じこもり、最低限の家事はこなすが外へ働きに行くことはなく、お気楽な専業主婦生活を送っていたか……と思いきや。
実はそうそう、お気楽でもなかったのです。
この頃もチャトレは続けていました。旦那が仕事へ出かける昼の間、秘密のお仕事として。パソコンの前で待機し、お客さんが入っただけパッと服を脱ぐ。「書いて待っていられる」チャトレは、副収入としてちょうどよかったし、月に3~5万円ぐらいにしかならなくても、本を読む以外は、通販で服を買うことぐらいが唯一の楽しみだったあたしですから、収入面での不満もあまり、ありませんでした。
とはいえ、ひたすら家に引きこもって作品と向き合い、「脱いでー」だの「オナニーしてー」だの連呼してくる男性を相手にしているわけですから、かなり精神はヤラれちゃいます。あたしは10代で風俗入りし、大人になってからも3年間風俗の世界におりましたが、そのくせ男性嫌悪……というか憎悪が、かなり強い。
その男性嫌悪って、主に、この時期に形成されたものの気がします。
パソコンごしに男たちの要求に応えながら、「てめーらの脳みそにはソレしか入ってねーのかよ、ボーケ!!」と、思いっきりバカにしまくってましたから。(ちなみに、顔はいつも、接客時は相手を嫌悪感を込めて睨みつけるような感じで、お客さんから恐ろしく不評なので、顔出しはしていなかったんです……理由が、すごいですね……)
それに、「小説家になる」という夢だって、叶うのかどうかもよくわからない。
自分に立てた目標があまりにも大きすぎてあまりにも遠すぎて、当の自分自身でさえ戸惑っていたし。スランプに陥って書けなかったり、ちょっとでも作品に批判のコメントがあったりすると、大いに荒れました。
オーバードーズしたり、暴れて家の中のものを滅茶苦茶にしたり、大声で叫んだり、お皿を次から次へと投げたり植木鉢を飛ばしたり……
旦那は最初のうちこそ、そんなあたしを止めようとしてくれましたが、いずれ、少し遠くから見つめるだけになった。
自分だって社会に出てまもなくて、いろいろ嫌なことあるだろうに、帰ってくればおうちはめちゃくちゃ、あたしは暴れている。
安らげる場所なんて、パチンコ屋さんとネットゲームの世界しかなかった元旦那。
鬱は移る……と、よくシャレのように言いますが、だんだん、引きずられるようにして、2人そろってメンヘラの穴へと落ちていきました。
それでも、「書きたい。小説家になりたい」という夢だけは、諦めなかった。
あたしの精神は昔も今もすごく弱いけれど、やりたいことが最初から決まっていたのと、それを諦めない強さだけはあったのが、本当に幸運でした。
<次回>はいよいよ、待ちに待った「ケータイ小説家デビュー」のお話です!!
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