Yuuna〜風俗嬢の恋 vol.3〜<第6話>
<第6話>
日が暮れる直前の、西に傾いた太陽が空気を鈍いオレンジに染める街。まだ気温は高いけれど時々吹く風は乾いていて、汗で湿った肌を気持ちよく撫でてくれる。
葱が飛び出したエコバックを提げ、ベビーカーを押して歩く若いお母さん。プール帰りらしく、カゴに水着の入ったビニール袋を入れて自転車を漕ぐ小学生。ホテルを目指しているのか、しっかり手を握り合いながら秘密を共有するような顔で歓楽街のほうへ行く若い二人……。夏の夕方を彩る人たちはみんな、なんて楽しそうなんだろう。
やっぱり、夏は嫌いだ。
眩しい世界に、眩しい人たちの姿に、自分のみじめさをとことん思い知らされるから。
世界が永遠に灰色の冬に閉ざされてしまえばいいのに。
空も土も空気も目に映るものすべてが灰色の世界。やがてそこに生きるあたしも灰色と同化してしまえば、自分と周りとの差を感じて暗い気持ちになることもなくなるはずだ。
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