Yuuna〜風俗嬢の恋 vol.3〜<第15話>
<第15話>
三番ボックスで待っていたのは三十歳半ばほどの、ちょい悪オヤジって感じの人だった。染めた髪も派手な柄のTシャツもじゃらじゃらしたゴツいアクセサリーも、若者ぶってる。
抱き寄せられるとお風呂上がりのような香水の香りがした。ごくあっさりした、不快感を催さないプレイだった。
この前のねちっこいおじさんの時みたいに、泣き出したくなんかならない。
そのことに逆にへこんでしまう。
あたしはもうすっかり身も心も風俗嬢で、本当に気持ち悪い人は別として、ある程度ルックスのいい人なら、たとえ見ず知らずの相手であっても、胸やあそこをまさぐられることに今さら嫌悪感を覚えないのだ。
本当は正義くん以外の男の人に抱かれたくなんかないし、正義くん以外の男の人の身体は嫌っ、汚いって、目を背けなきゃいけないのに。そうなりたいのに。
たぶんあたしは二度と、普通の女の子には戻れない。
「やよいちゃんは、彼氏いるの?」
終わった後、タバコをふかしながらその人は聞いてきた。
以前なら自分が惨めになるだけの質問にも、今ならちょっとこそばゆい気持ちで答えることが出来る。
「はい、一応」
「へー。そりゃそうだ、可愛いもんね。大学の人?」
「いえ……その、バイト先の」
「バイト先って。えっ。まさかこの店? 店長!?」
「店長じゃなくて。宣伝のティッシュ配ってる男の子です」
どういう子? いつから付き合ってるの? と矢継ぎ早に質問を浴びせられ、気がつけばだいぶ詳しく正義くんの話をしてしまっていた。
お客さんに店員同士の恋愛をバラすなんて、非常識だったろうか。まぁいっか、どうせもうすぐ辞めるんだし。
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