Yuuna〜風俗嬢の恋 vol.3〜<第17話>
<第17話>
無駄な抵抗とわかって何度もセンター問い合わせをした。いくら繰り返しても当然のように、『新着メールはありません』。
そんなことをやっているとプレイを終えたゆかさんが休憩室に入ってきて、携帯と睨めっこしているあたしをいたずらっぽい目で見た。
「彼氏?」
「え、あ、はい」
「へぇ、やっぱり。さっきね、まゆみさんと話してたんだ。やよい、絶対男出来たよねえって」
「……わかりますか?」
「そりゃもう、わかりやすいぐらい」
笑いながら、ゆかさんの顔をまっすぐ見れない。
もともと、あんまりお店の他の女の子たちとは関わらないようにしてきたけど、みんなはそうじゃなかった。いくらあたしが距離を取ろうとしてもあたしの知らないところであたしに興味を持ち、噂話までしている。そのことがどうにも、たまらなかった。
「でも気をつけなよー。やよい、遊ばれやすそうだもんね」
遊ばれやすそう。その言葉がナイフになって胸をえぐる。一般論でもうすぐ終わると言われ、次は遊ばれやすそうと言われる。
他人の言葉だと言ってしまえばそれまでだけど、他人の言葉ほど客観的なものもない。
「浮気とか、気をつけたほうがいいよ。されたらもう悲惨なんだから!」
「ゆかさん、浮気されたことあるんですか」
「あるっていうか、現在進行形だよ」
苦笑いしながらゆかさんは財布片手に休憩室を出て行く。自販機にタバコを買いに行くんだろう。
もうすぐ終わる、遊ばれやすそう。もうすぐ終わる、遊ばれやすそう。もうすぐ終わる、遊ばれやすそう……
首を振っても耳をふさいでも、その言葉はどこまでもあたしを追いかけてきた。身体の真ん中がぐんぐん冷えていく。
見た目をちょっと変えたくらいで、自信がついたわけじゃない。ついたとしてもそれは、風が吹けば飛ぶような、おそろしくもろいものだった。
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