Yuuna〜風俗嬢の恋 vol.3〜<第21話>
<第21話>
「サークルの話、どうしてしてくれなかったの」
「夕菜、そういうの気にすると思って」
「黙っていられたり、嘘つかれるほうが、気になる」
正義くんばっかり責められない。
この人があたしにサークルのことを言えなかったのは、あたしが信頼されてないからだ。
いちいち疑ったり勘ぐったり嫉妬したり、そういうことをする女じゃないんだって、信頼されてない。あたしが、もう、正義くんを信頼できないのと、同じで。
「あたしと会うことより、あの子たちを優先したんだね」
「違うよ。友だちだよ、友だち。急に飲み入って、断れなくて、それで」
「ほんとに、断れなかっただけ?」
「うん……」
曖昧な頷き方がまた黒々とした疑いを呼ぶ。
やっぱり正義くんはあたしといるより、あの女の子たちといるほうが楽しいのかもしれない。それが言葉通り、単なる友情だとしても、許せなかった。
きっと、もう無理だ。
そっと手を振り払うと、正義くんの手のひらは抵抗せずに手首を開放してくれた。必死にすがりつくような顔に背を向ける。
「わかった、もう連絡しないで。こっちも連絡しない、アドレスも消す」
「ちょ、待ってよ! そんなのおかしいだろ。嫌だよ俺、こんなことで別れるなんて」
「あたしにとってはこんなこと、じゃない」
「ごめん。本当にごめん。許して。謝るから。嫌だよ。頼む」
後ろからがっしりと二本の腕で抱きしめられて、息もろくに出来ないほど苦しくて、止まらない涙に世界は閉ざされていく。
あたしも、同じ気持ちだった。傷つきたくない、傷つけられたくない。
それでいて同じくらい、あたしを抱きしめてくれるこの腕を失いたくない。
「わかった」
そうは言ったものの、知っていた。
あたしはもう幸せな気持ちで、正義くんと向き合うことは出来ないって。
だって信じられないのは正義くんじゃなくて、自分だから。
自分がちゃんと正義くんの気持ちを繋ぎとめられていると思えない以上、これからも疑ったり勘ぐったり、他人の言葉に左右されて不安になったりしなきゃいけない。暗い日々が、始まる。
自信のないあたしは風俗嬢に向いていない。
恋にも向いていない。
というよりそもそも、生きることに向いてないのかもしれない。
<第3章 完>
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