Kiyomi〜風俗嬢の恋 vol.4〜<第4話>
<第4話>
平日の午後5時過ぎはピークタイムの一歩手前。女の子は3人出勤していてボックス席に入ってるのはりさだけ。
あたしと香耶は休憩室で待機。ゆかがいつもタバコをプカプカ吸うので部屋の中はタバコ臭く、禁煙中なのに吸いたくなってくる。おかげで「吸いたい欲」をまぎらすように、口ばっかりぺらぺらとよく回る。
「だからさ、要はクビ宣告なわけだよね。あんたはもうオバサンだからうちの店にいてくれるな、さっさとやめろってこと。やんなっちゃうよね、あたしきっと他の店なんて務まらないよ。M女は嫌だし、本番も嫌だし。だからってさ、もう23歳じゃん? 今からキャバとか始めるのも微妙っしょ、キャバってそれこそ若いし。18歳とか19歳とか」
「真っ当な仕事に就くって選択肢はないの?」
鏡の中の自分を覗き込み、アイラインを引き直しながら香耶が言う。
ほぼ同時に入店して歳もタメの香耶は、あたしがこの世で唯一心を許せる相手だ。
彼女の優しくてふんわりした雰囲気は、店でも安定した人気を誇っていて、「癒し系のまゆみ」だなんて、風俗情報誌にもたびたび取り上げられている。
「無理無理。事務とか出来ないもん、絶対。それに、うちに来るような客、つまり変態のキモいおっさんね? ああいうのにこきつかわれるなんて、考えただけでゾッとするっての」
「なるほど、つまり、清美にもついに病み期が来たってわけだ」
アイライナーをポーチに仕舞って今度はチークを取り出しながら、香耶が自嘲的に笑う。
来月23歳の香耶にとっても、あたしのクビ宣告は他人事じゃないはずだ。
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