Kiyomi〜風俗嬢の恋 vol.4〜<第11話>
<第11話>
ずっと見てなかった常連客が久しぶりに来た。最後に遊んだのはたしか桜が五分咲きくらいになった頃だったから、かれこれ5カ月ぶり。
おしぼり片手にボックス席に向かいながら、久々のデートを控えた乙女のように心が潤って、弾んでいた。
ほら、大丈夫。あたしはまだまだイケる。23歳になったって、へっちゃらだ。社会に見捨てられるには早すぎる。
なのに、「お久しぶりでーす」とキャピキャピしながらボックス席に着いた途端、あたしの2倍ぐらいの歳と思われる痩せたおっさんの客は、こう言った。
「あれー、さおりちゃん。ちょっと見ない間に、フケたねぇ」
目を細めて、まったく邪気のないように。
まるで1年ぶりぐらいに会った親戚の子どもの頭を撫でながら、『大きくなったね』なんて言うのと同じ口ぶりだったから、余計に堪えた。
しかし勤務中だ。しかも常連客だ。嫌な顔は出来ない。
「えー、意地悪ぅ。どこらへんがですかぁ?」
「なんていうか、全体的に。制服が浮いて見えるよ。その猫撫でぶりっこ声もずいぶん痛々しくなっちゃったね」
さすがに笑顔が消えた。あたしの内心に気付いてないのか、気付いて面白がってるのか、おっさんは更に追い討ちをかけてくる。
「僕がこない間、なんかあった? あっそうそう、入り口のボード、ナンバーワンの表示が変わってたけど」
「……」
「なぁるほど、新しい子にナンバーワンを取られちゃって、その心労で老けたってわけかぁ。あはは、可哀想に」
おっさんの頭越しに、廊下を挟んで向かい側のボックス席で、男と絡まっているりさが見えた。外から見えづらいように、もっと奥のほうで、こそこそ申し訳なさそうにヤレばいいものを……。
なんで、わざわざあたしに見えるところで、上半身裸になってるんだろう?
りさのことだからそんなつもりはないのかもしれないが、悪気がなければ、かえってムカつく。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。