Kaya〜風俗嬢の恋 vol.5〜<第2話>

2014-02-09 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,084 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Kaya 連載小説 風俗嬢の恋


 

JESSIE

 

<第2回目>

 

休憩室の中には富樫さんだけがいた。

 

今は水曜日の午後6時過ぎ、出勤している女の子はあたしを入れて4人。あとの3人は全員がボックス席の中だ。

 

「お疲れ様」

「お疲れ様です」

 

挨拶をしながら、どうしても富樫さんの顔をじろじろ眺め回してしまう。そこに清美の霊が貼り付いてないか、探すみたいに。

 

本当は富樫さんと清美の思い出を語り合いたかったけれど、葬儀にすら出席せず、清美が死んだ後も店で淡々と仕事をこなす富樫さんの前では、清美の「き」の字すら出すことが出来ない。

 

この人が本気で清美を思っていなかったのは知ってたけど、どうしてここまで冷たい態度を取れるのか、理解できなかった。

 

「あのさ、まゆみ。わかってると思うけど、うちって一応、22歳までってことになってるんだよね」

 

手鏡を開いて化粧を直していると、富樫さんが話しかけてくる。顔は固いのに、口調はこの人にしては柔らかい。

 

ついに来たか、と覚悟した。清美がされたクビ宣告。同い歳のあたしが、されないわけがない。

 

「まゆみって今月、誕生日だよね?」

「はい。23歳になります」

「そっか。ねぇ、うちの系列でソープやってるんだけど、そこ、移らない? 他のソープよりも歳いってる子が多くてね、落ち着いた、大人の女性がコンセプトになってるんだ。まゆみなら、そこは合ってるしね。落ち着いてて、大人っぽい」

「考えてみます」

 

うん、よろしくー、と軽く言って、富樫さんは休憩室を出て行った。入り口のベルが鳴ってお客さんが入ってきたから。

 

まもなく騒がしいトランスミュージックの向こうに、受付で話すお客さんと富樫さんの声が聞こえてくる。

 

 

 




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