Kaya〜風俗嬢の恋 vol.5〜<第3話>

2014-02-10 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,228 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Kaya 連載小説 風俗嬢の恋


 

JESSIE

 

<第3回目>

 

簡単に決められることじゃない。同じ風俗でもうちみたいなライト風俗と本番ありのソープとじゃ、何もかもが違う。

 

報酬も、覚悟も、そこで失うものも……。

 

でも、系列店に移らないということはうちを辞めることで、辞めることイコール無職になることで、無職になったらイコール働かなくちゃいけなくて、それが風俗でないとすれば、つまり、普通の仕事をすることになる。

 

普通の仕事なんて、一度も、一瞬でも、したことなかった。

 

「お疲れ様でーす!」

 

うきうきと弾んだ甲高い声にはっとして、つい驚き顔になってしまった。

 

つい最近入店したばっかりの、新人のあやだった。まだ18歳で、よくしゃべって、とにかくテンションが高い。短くカットした金髪がよく似合う、いたって今どきの女の子だ。そこまで悪い子じゃないんだろうけれど、実はあたしはこの子がちょっと苦手だった。

 

清美が死んだ時、

 

「ねぇねぇさおりさんってなんで死んだんですか? まゆみさんって仲良かったんですよねぇ、なんか知ってません? そうそう、あの人富樫さんと付き合ってたって聞いたんですけど、本当ですか? それが原因ですか? 別れ話でもされて?」

 

なんて、目をらんらんと光らせながら聞いてきたからだ。

 

「ねぇねぇ、まゆみさん。キモいオヤジにキスしていいって言われたら、どうしてますか? しちゃいます?」

 

この子が隣にいたら、もう化粧どころじゃない。

 

あたしは手鏡を閉じ、にっこりと笑顔と作ってあやの顔を見る。苦手な子でも、ほんのり嫌いだと思っていても、いい顔をしてしまう。すっかり身についてしまった癖だった。

 

みんなはこんなあたしのことを「優しい、いい人」と言う。

 

「うーん、それはしょうがないんじゃない? お仕事だもの」

 

「さすがまゆみさん、えらーい! あたしだったら、断っちゃってますよ。若くてかっこいい人だったらしちゃうけど、オヤジは無理。キモイもーん」

 

何がおかしいのか、ゲラゲラ笑う。あたしも合わせて笑う。

 

それにしてもやっぱり、よくしゃべる子だ。そして、しゃべることのすべてが、不愉快に耳にまとわりつく。

 

 

 




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