Kaya〜風俗嬢の恋 vol.5〜<第9話>
<第9回目>
あたしは昔から友だちが少なかった。
それは高校卒業と同時に上京してからも変わらなくて、その少ない友だちの1人に、生まれて初めての合コンに誘われた。それが4年前。大学を休学して、同時にあの店で働き始めた頃だった。
生まれて初めての合コンは、似合わない服を着せられているようで、男の子たちと女の子たちの間に漂う雰囲気にどうしても馴染めなくて、終始落ち着かなかった。
それは要も同じだったようで、間違った場所に来てしまって途方に暮れていた同士、すぐに互いに共通のものを見出して、仲良くなれた。
まもなくそのまま、付き合いだした。この付き合い始めの頃に、自分の仕事のことを言うべきだったのに……、言いそびれたのだ。
要は何もかもあたしと正反対だった。
優秀と言われている大学を卒業し、公務員という世の中で一番真っ当な職に就いていた。真面目で、優しくて、でもダメなことはきっぱりダメと言える、言うことない人だ。
だから、「結婚するなら絶対に要と」と思っていた。
事実あたしは、要が就職してからの1年半、要のプロポーズを心待ちにしていた。要と一生一緒にいられるなんて、これ以上の幸せなことはなかったし、要に生活を支えてもらえれば、風俗を続ける必要もない。
でも、要はきっと、そんなあたしの甘えをちゃんと見抜いていた。
結婚という逃げ場に自分がなることを嫌った。ちゃんと自立しなければ、風俗をやめて真っ当な仕事をしなければ、要はあたしを認めてくれないだろう。プロポーズもしてくれないだろう。
要は厳しい人だ。その厳しさに、惹かれた。
要のためなら、要に認められるためなら、頑張ろうと思った。頑張れる気がした。
もちろん現実は厳しかった。
地方の高校を出ただけのあたしを雇ってくれる企業が、この不景気の世の中にそうそうあるわけない。ただでさえあたしには資格とか自慢できる学歴とか、ひとにアピール出来るものが何にもなかった。
面接の時、必ず言われる。「高校を卒業して4年以上も、いったい何をやっていたんですか?」と。まさか「風俗嬢を……」だなんて言えるわけないから、フリーターです、と答えるしかない。
夢がない。目標がない。誰かに誇れるものをひとつも持っていない。
そんなあたしの真実は、面接官の氷みたいな目にことごとく見透かされた。
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