Kaya〜風俗嬢の恋 vol.5〜<第17話>

2014-02-24 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,086 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Kaya 連載小説 風俗嬢の恋


 

JESSIE 

 

<第17回目>

 

やっぱり、間違ってるのはあたしだ。

 

大人なら、普通の立派な人間なら、あれぐらいでキレたりしちゃいけない。我慢しなきゃいけない。

 

トロいのも、仕事が出来ないのも、あたしのせいなんだから、キレる権利なんてどこにもない。

 

どんなに怒られてもなじられてもじっと身をすくめて、ひたすら頭を下げる。きっと、ここを歩いているみんなは、普通にやってきたことだ。

 

みんなが出来るごく普通のことが、どうしてあたしには出来ないんだろう?

 

そもそも昔から人間関係がうまくいかなかった。

 

上司と部下、先輩と後輩、そういうタテの関係以前に、友だち同士のヨコの関係が苦手だった。

 

中学も高校も、不登校がちだった。いじめまではいかないけれど、「○○ちゃんが、香耶ちゃんのこと、ウザイって言ってたよ」って、仲のいい子の裏切りを人づてに聞いたこともある。

 

仲良しグループのはずなのに、1人抜けるとすぐその場にいない子の悪口を言う友人たち。「香耶ちゃんもそう思うでしょ?」と言われたら絶対反論できない自分……。

 

そういうものに耐えられなくて、逃げた。戦う勇気なんて、強さなんて、持てなかった。

 

あたしは何かを受け流したり、何かを気にしないってことが、一切出来ない。誰かに嫌われるのは、自分が少しずつ死んでいくことと同じだった。

 

でも、いつまでもそんなことばっかり言っていられない。

 

それに、心配しながらも、あたしへの期待を捨てきれない親のことを、安心させなきゃいけなかった。

 

だから、大学受験の時、ちょっとだけ頑張った。田んぼと畑と神社しかない地元では、名前を聞いただけで、みんなが目を見開くような東京の大学に受かった。

 

馬鹿なあたしは、それだけで少し自分が変われた気がしたんだ。

 

これでもう、大丈夫だって。普通に学校に通える、普通に人と交われる、みんなと同じ普通の女の子になれたって。

 

実際、どこも変わってなんかいなかったのに……。

 

 

 




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