Kaya〜風俗嬢の恋 vol.5〜<第17話>
<第17回目>
やっぱり、間違ってるのはあたしだ。
大人なら、普通の立派な人間なら、あれぐらいでキレたりしちゃいけない。我慢しなきゃいけない。
トロいのも、仕事が出来ないのも、あたしのせいなんだから、キレる権利なんてどこにもない。
どんなに怒られてもなじられてもじっと身をすくめて、ひたすら頭を下げる。きっと、ここを歩いているみんなは、普通にやってきたことだ。
みんなが出来るごく普通のことが、どうしてあたしには出来ないんだろう?
そもそも昔から人間関係がうまくいかなかった。
上司と部下、先輩と後輩、そういうタテの関係以前に、友だち同士のヨコの関係が苦手だった。
中学も高校も、不登校がちだった。いじめまではいかないけれど、「○○ちゃんが、香耶ちゃんのこと、ウザイって言ってたよ」って、仲のいい子の裏切りを人づてに聞いたこともある。
仲良しグループのはずなのに、1人抜けるとすぐその場にいない子の悪口を言う友人たち。「香耶ちゃんもそう思うでしょ?」と言われたら絶対反論できない自分……。
そういうものに耐えられなくて、逃げた。戦う勇気なんて、強さなんて、持てなかった。
あたしは何かを受け流したり、何かを気にしないってことが、一切出来ない。誰かに嫌われるのは、自分が少しずつ死んでいくことと同じだった。
でも、いつまでもそんなことばっかり言っていられない。
それに、心配しながらも、あたしへの期待を捨てきれない親のことを、安心させなきゃいけなかった。
だから、大学受験の時、ちょっとだけ頑張った。田んぼと畑と神社しかない地元では、名前を聞いただけで、みんなが目を見開くような東京の大学に受かった。
馬鹿なあたしは、それだけで少し自分が変われた気がしたんだ。
これでもう、大丈夫だって。普通に学校に通える、普通に人と交われる、みんなと同じ普通の女の子になれたって。
実際、どこも変わってなんかいなかったのに……。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。