Kaya〜風俗嬢の恋 vol.5〜<第22話>

2014-03-01 20:00 配信 / 閲覧回数 : 959 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Kaya 連載小説 風俗嬢の恋


 

JESSIE

 

<第22回目>

 

「あたし、清美に言わなきゃいけなかったよね。富樫さんなんて、やめとけって。富樫さんはちゃんと清美のことを見てない、傍目にもわかるよって。そういうこと言えるのは、友だちだけだし」

 

ゆかが灰を落としながら、小さく首を振った。

 

「無意味ですよ、そんなの。恋愛して舞い上がってる時に、女友だちの忠告なんて、右から左だし」

「うん。1度だけ、2人の時にさりげなく、ごくかるーい感じで言ったことあるの。富樫さん、本当に清美のこと好きなのかなあ? って」

「そしたら?」

「何それ、どういう意味? あんたにはそんなこと関係ないでしょ、ほっといてって、キレられちゃった」

「やっぱり」

 

幅は広いけれど細い、ゆかの肩が上下する。

 

さんざん清美にいじめられてたくせに、清美が死んだとあたしに聞かされて、ぼろぼろ泣くやよいを抱きしめながら、自分も目を潤ませていたゆかの姿を思い出した。

 

ゆかは清美を怖がってたかもしれないけれど、清美を心底嫌ってたわけじゃないんだと思う。

 

むしろ哀れんで、可愛そうに思ってたんじゃないだろうか。

 

「でもね、言うだけ言わなきゃいけなかったんだろうなって、今思うの。それであたしと清美の仲が崩れたとしても。友だちってそういうものじゃない? もし、あたしが言うべきことを言ってたら、変わってたかな? 清美、死ななくて済んだのかな?」

 

清美に嫌われたくないから、富樫さんとの付き合いをやめさせられなかった。

 

要に嫌われたくないから、嘘をつき続けた。

 

あたしはいつもそうだ。人に嫌われたくなくて、人に嫌われるのが怖くて、怖がり過ぎるばっかりにかえって大事なものを壊してしまう。

 

ゆかが言う。

 

「たとえまゆみさんがそうしても、どうにもならなかったと思います。さおりさんが死んだの、本当は富樫さんのせいじゃないですよ」

「……」

「まゆみさんなら、わかるんじゃないですか?」

「そうね」

 

清美を押しつぶしたものは、あたしや、ゆかの背中にも乗っかっている。

 

清美はきっと、うまく生きられない自分に、うまく生きることのできない人生に、絶望したんだ。

 

入り口のドアを開け閉めする音がして、ゆかが慌ててタバコを消し、準備を始めた。まだ白い煙が残る休憩室の中で、あたしは壁にもたれ、薄く目を瞑る。

 

自分の人生なのに、自分が主人公じゃない。

 

誰かや何かに操られてばっかりで、何ひとつちゃんと選べてない気がする。

 

あたしだけなんだろうか。あたしが弱くて不器用過ぎるだけなんだろうか。

 

それともみんな、そうなんだろうか。

 

 

 




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