Kaya〜風俗嬢の恋 vol.5〜<第26話>
<第26回目>
プレイタイムが終わって休憩室に戻ってくると、やよいがいた。半袖のセーラー服からはみ出した腕は、相変わらず棒みたいに細い。
「やよいちゃん、久しぶり」
「聞きました。まゆみさん、戻ってきたんですよね。お久しぶりです」
その声の細さに、まったく生気のないぎこちない笑顔に、驚いた。
ガイコツのものみたいな指は、低カロリーをウリにしているダイエット用のおやつのパッケージを握っていて、もう片方の手で水の入ったペットボトルを握っている。
やよいは最後に見た時より明らかに痩せていた、というより、やつれていた。しかもこの上まだ、自分の身体を削ってしまおうというんだろうか。
「やよいちゃん……、痩せた?」
「はい。9月に入ってから、3キロぐらい」
「大丈夫なの!? それ以上痩せたら、ガリガリよ。いや今でもガリガリだけど。病気とか、なっちゃうんじゃ」
「平気です、たぶん」
言いながら、パサパサに渇いたウエハース状のものを噛み砕き、水で流し込む。
そんなもので十分な栄養が摂れるわけない。身体はもっと食べ物を必要としているはずなのに。
拒食症、という言葉が不吉な予言のように頭に浮かんだ。
「ちゃんと、食べてるの? そういうものじゃなくて、ご飯」
「……これで、お腹いっぱいなんで」
「まさかそれ、お昼じゃないわよね?」
「お昼……、これだけですけれど?」
あたしの言ったことがおかしかったとでも言うように、やよいはうつろな目で首をかしげる。
首の後ろがぞっと冷たくなった。
ダイエットにのめりこんでいるやよいが気味悪いんじゃなくて、かつての自分が目の前に現れたと思ったから。
何があったのか知らないけれど、やよいは確実に悪い方向に向かっていた。
かつてのあたしを思い出す。学校に行かずに引きこもり、手首を切ることに熱中していた13歳の女の子を……。
自分を痛めつけるのは、他にやり場のない気持ちをぶつけるほとんど唯一の効果的な方法で、やり始めるとブレーキが効かなくなる。
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