【連載小説】Rizu〜風俗嬢の恋〜<第3話>
<第3話>
着替えを済ませて裕未香と一緒にフロアに出ると、
早速富樫さんに指名が入ったことを告げられ、
おしぼり片手に二番のボックス席へ向かう。
富樫さんはここの店長で、金メッシュを入れた黒髪をオールバックに撫で付けた、
ひょろっと背の高い男の人。歳はたぶん、30前半ってとこ。
三ヶ月前、求人のティッシュに書いてあった番号に
電話したあたしと喫茶店で面接したのは、この人だ。
ティッシュにはキャバクラの名前と「体験入店二時間一万円」の文字が躍ってたけど、
実際会って話してみたら系列のピンクサロンを紹介された。
「大学生だよね?学校行きながらキャバなんてまず無理だよ、
同伴アフター、そんなのやってたら学校なんか行けないからね。
その点こっちのお店なら時間の自由もきくし」って。
後で知ったけど、そのへんで配ってるキャバ嬢募集のティッシュ広告なんて、
電話すればたいがいいかがわしい店に入れられるらしい。
ここで「キャバはいいけど風俗なんて絶対イヤ」っていう
「普通の、まともな」神経の女の子なら迷わず断るんだろう。
でもあたしは既に好きでもない男の人と寝ることを日常にしている人間で、
風俗の仕事を始めるのに大した覚悟も勇気もいらなかった。
「りさちゃん、今日なんか感じ違わない?」
隣のコンパートメントと薄い板一枚で区切られてるだけのボックス席に座ると、
今日で五回目のこのお客さんはさっそくあたしを抱き寄せ、
まるまるした顔をくっつけてきて背中の真ん中らへんまである黒い髪をわしゃわしゃ撫でた。
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