フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第8話>

2014-03-15 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,335 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Aimi フェイク・ラブ 連載小説


 

JESSIE

 

<第8話>

 

「聡は不安じゃないの? 私は不安だよ。こんな生活おかしいよ。私ばっかり働かせてさ、仕事だって楽じゃないのに」

 

言いながら涙が滲んでくる。視界が歪んで聡の顔が輪郭を失う。

 

「なんで仕事探さないのよ。なんでゲームばっかしてんのよ。真剣にやればとっくに見つかってるはずでしょ、もう1年も経つんだよ? 会社辞めて。何やってんの?」

「藍美……」

「このままじゃ、2人とも飢え死にするよ。アパート追い出されるよ。今月の家賃だって払えるかどうかわかんないんだからっ」

「藍美」

 

テーブルの向こうにいたはずの聡が、いつのまにか後ろに回り込んでいて、ぐいと抱き寄せられた。

 

いけない。

 

その胸に顔を埋めちゃいけない。その腕に身を任せちゃいけない。

 

分かっているのに、後から後から涙を生む心は、ひりひり苦しくて、温かくて安易な優しさを見せつけられたら、ついそこに寄りかかってしまう。

 

「藍美、ごめん。本当にごめん。泣かせてごめん。悪いのは俺なんだよな。俺がうつなんかになるから……」

 

こういう時聡は必ず、普段はほとんどしないうつの話を持ち出す。

 

悪いのは俺だと言っておいて、本当に聡が責めているのはうつだ。自分を否定する勇気がないから病気のせいにして逃げる。

 

「ごめん、ごめんな、藍美。俺だって本当は藍美に悪いなって思ってんだよ。藍美ばっかり働かせて、苦労させて、大変な思いさせてさ、俺がうつなんかになるからいけないんだよな」

「……いつになったらそのうつは治るの?」

 

聡の腕の中で恨みがましい声が出た。

 

 

 




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