フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第8話>
<第8話>
「聡は不安じゃないの? 私は不安だよ。こんな生活おかしいよ。私ばっかり働かせてさ、仕事だって楽じゃないのに」
言いながら涙が滲んでくる。視界が歪んで聡の顔が輪郭を失う。
「なんで仕事探さないのよ。なんでゲームばっかしてんのよ。真剣にやればとっくに見つかってるはずでしょ、もう1年も経つんだよ? 会社辞めて。何やってんの?」
「藍美……」
「このままじゃ、2人とも飢え死にするよ。アパート追い出されるよ。今月の家賃だって払えるかどうかわかんないんだからっ」
「藍美」
テーブルの向こうにいたはずの聡が、いつのまにか後ろに回り込んでいて、ぐいと抱き寄せられた。
いけない。
その胸に顔を埋めちゃいけない。その腕に身を任せちゃいけない。
分かっているのに、後から後から涙を生む心は、ひりひり苦しくて、温かくて安易な優しさを見せつけられたら、ついそこに寄りかかってしまう。
「藍美、ごめん。本当にごめん。泣かせてごめん。悪いのは俺なんだよな。俺がうつなんかになるから……」
こういう時聡は必ず、普段はほとんどしないうつの話を持ち出す。
悪いのは俺だと言っておいて、本当に聡が責めているのはうつだ。自分を否定する勇気がないから病気のせいにして逃げる。
「ごめん、ごめんな、藍美。俺だって本当は藍美に悪いなって思ってんだよ。藍美ばっかり働かせて、苦労させて、大変な思いさせてさ、俺がうつなんかになるからいけないんだよな」
「……いつになったらそのうつは治るの?」
聡の腕の中で恨みがましい声が出た。
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