フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第14話>
<第14話>
抵抗はもちろんあった。あり過ぎた。
体を売るなんて絶対しちゃいけないことなんだし、22才にして聡以外の人との経験はない。
それでも、この世界に飛び込まなきゃいけないほど、切羽詰った状況だったんだ。
今までは、町でもらってもすぐにゴミ箱に捨てていた無料の冊子をめくると、『脱がない・舐めない・触られない』という文句がやたら目についた。
風俗といってもすべての店が体を売るわけではなく、オイルを使ったマッサージをして最後は手でしごくだけ、キスもお触りもNG。そういう店も実はたくさんあることを知り、それならばと思って、『脱がない・舐めない・触られない』のキャッチフレーズを掲げる店に面接の電話を入れた。
甘かった。
雑居ビルの一室に通されると、スーツ姿で一見普通の、でもよく見れば顔も雰囲気もどことなく胡散臭い男の人が出てきて、彼はよどみない口調で説明を始めた。
それによれば、『脱がない舐めない触られない』店は、お給料が少なく、女の子も多すぎて稼げない。私の希望の金額を稼ぎたいのなら、この系列にあるヘルスに行ったほうがいいと……。
性感エステなどの体を売らない風俗は、ハードなサービスを提供しないぶん、それなりの容姿でなきゃ稼げないというのは後から知った。
でも、ブスの私は、本番ありのデリバリーヘルスという、風俗の中でももっともしんどくてグレードの低い店ですら、無理だった。
とにかくお客さんがつかないし、ついても昨夜のようにブスブスと罵られてひどい扱いを受けたり、目の前でチェンジを言い渡されることも多い。
いつもお茶か、終了間近のフリー1本で終わってしまう。風俗なのに、1日のお給料が2万を超える日は月に2、3回だし、お茶の日は出勤してもお給料なし。
こんな状態じゃ本当に暮らしていけない。
聡と2人で払うことを前提に借りた2LDKの家賃は思いのほか高く、とても私1人の収入じゃ、大人2人の生活は維持できない。
風俗が、こんなにしんどくて、こんなに稼げない仕事だって知ってたら、こんな世界に来なかったのに……。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。