【連載小説】Rizu〜風俗嬢の恋〜<第12話>
<第12話>
高校生になると入学と同時に携帯を買ってもらったので、出会い系サイトにアクセスして数えきれないほどのおじさんたちとセックスをした。
なめなさい、と言われてなめた。写真を撮らせてほしい、と言われて撮らせた。ハイヒールでお尻を踏んづけてほしい、と言われて踏んづけた。
お金をくれれば、もらった。
法律違反だとは知ってたけど、悪いことだとは思ったことがなかった。
貞操観念というか、倫理観みたいなものの一部がすっぽり抜け落ちているのかもしれない。そもそも貞操なんて守ろうとする間もなく奪われちゃったんだから。
むしろ、ちょっといいことをしている気さえした。
言うことを聞いて喜んでもらえて、自分が気持ちよくなって、他人を気持ちよくさせて。
醜くでっぷり太って、脂の腐った臭いをぷんぷんさせているおじさんの腕の中は、いつでも安心した。相手が誰か、は関係なかった。おじさんは、あたしのバージンを奪った小学校の先生でも、脅して関係を結んだテニス部の顧問でもあった。
一緒に住んでいるお母さんにバレたことはない。あたしが二歳の頃に離婚して、以来女手ひとつであたしを育ててくれたお母さんは、仕事があんまり忙しくて、帰りが夜の十二時を過ぎることもしょっちゅうだった。あたしを大学に行かせるため、必死だったんだ。
あたしはお母さんが大好きだった。
でも援助交際のことをお母さんに申し訳ないと思ったことは、一度もなかった。援助交際は後ろめたいことじゃなくて、心の支えみたいなものだったから。
お母さんが、職場で知り合った十二歳年下の彼氏と再婚して、あたしは東京の大学へ進学を決めた。あたしがお母さんのそばにいることは、初恋まっただなかの女子高生のように顔をほころばせているお母さんの幸せを、邪魔することだった。といのうは、目元が涼しげですらっと背が高くて、学生時代にラグビー部で鍛えてたっていうムキムキの身体が自慢のお母さんの恋人は、時々あたしを品定めするような目で見て、それがすごく嫌だったから。
醜くいやらしいおじさんにそうやって見られるのは構わないのに、まだ若さを残したかっこいいこの男の人に同じことをされるのは、本当に嫌だった。
あたしがお母さんの好きな人を取るようなことになっちゃったら、絶対いけないんだ。
お母さんに嫌われたらあたしはたぶん生きていけない。
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