フェイク・ラブ 最終章〜Rin〜<第3話>
<第3回目>
「いいんですか?」
「いいよ、後はあたし、やっとくし。施術連チャンで、疲れたでしょ? 夕飯休憩取れた?」
「取れてないです」
「じゃあ、さっさと上がって、なんか食べなって」
ありがとうございますと頭を下げながら、涙ぐみそうになる。
我れながら大袈裟。
エネルギッシュで、実力派で、頭もキレるあけみさんは、あたしの憧れのネイリストだ。
前のサロンの店長には何度もネイリストを辞めようかと思わされただけに、あけみさんの優しさは胸に染みる。
1つ年下だった前のサロンの店長は、20代も終わりかけにしてこの業界に入ってきたあたしのことが、覚悟も根性もなく憧れだけでネイリストになった甘ちゃんに見えたんだろう。
確かにそういう人もいるし、とりあえず手に職を持てば生きていけるだろうと思っていたあたしには確実に甘ちゃんな部分もあった。
とはいえ覚悟と根性はしっかりあったから、今もこうしてネイリストを続けている。
「あっ、そうそう」
あけみさんが壁のカレンダーを見て言う。世界一有名なうさぎの男の子が描かれた、月曜始まりの月めくりカレンダー。
「明日さー、早く来れない? 15時とかから。土曜日に来月の『ネイルLOVE』の取材あるから、その打合せしたいんだよね。難しい?」
本当は断りたかった。
だって、今夜もこの後ドリームガールに出勤して始発まで働くことになっている。明日16時からの遅番出勤は、最低限の睡眠時間を確保するにはぎりぎりのスケジュールだ。
でも、あけみさんに信頼して仕事を任せてもらえるのは嬉しいし、いつか自分のサロンを持つという目標にも近づく。だからあたしは、笑顔で頷く。
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