フェイク・ラブ 最終章〜Rin〜<第5話>
<第5回目>
目の前の客がテレパシストでなくて本当によかったと思う。
もしあたしの内心が読めていたらたちまち萎えるだろうし、それどころかトラウマで一生インポだろう。
胸の内で牙を剥いて暴れる本音に対抗するため、必死で喘ぐ。頭の中で何を考えてたって、客にはひたすら、あんあんあんあんあんあんあんあんあんあんあんあんあんあんとしか聞こえない。
「はぁ、気持ちよかったーぁ」
お風呂とトイレをいっぺんに済ませたようなすっきりと満ち足りた笑顔で客は言う。しぼみ始めたちんこを乱暴にティッシュで拭いながら。
よほど溜めていたのか、すごい臭いが狭い部屋に広がっていて、しかめ面になりそうなのをぐっとこらえる。
「はるかちゃんは本当にエッチだよねー。プライベートでもそんな声、出しちゃうの?」
「えー、どうだろー?」
「きっと、プライベートでもエッチなんだろうね。はるかちゃんからは演技じゃない、天然の、天性の、エロスを感じるもん」
いや、演技だから100%。
仕事だから応じてんだよ、仕事だから喘いでんだよ、てめーなんざ金くれなかったら指一本触れさせねーよ、って言ってやりたいのをグッとこらえる。
風俗は、男にとってディズニーランドのような夢の世界で、風俗嬢の仕事はディズニーランドのキャストよろしく夢の世界を演出することだ。
ニセモノの愛、ニセモノの微笑み、ニセモノの快感、ニセモノの淫乱嬢。
たとえそれが一時の癒しに過ぎず、根本的な解決にはまったくならなくても、夢とはたぶん必要なもので、あたしはこの仕事にはほとほと飽きているが、風俗は世の中になくてはならないものなんだろうとは思う。
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