フェイク・ラブ 最終章〜Rin〜<第12話>
<第12回目>
冨永さんの第一印象は「変わってる人」。
歳はあたしより少し上、背が高くて180cmそこそこはありそうだし、肩幅も広いのでかなり大柄。
その大きな体を、絶対にダメージ加工じゃない穴がいくつも空いたジーンズとか、世界地図みたいにあちこち染みがつきまくったTシャツやパーカーで包んでいる。
暇な時は熱心にノートに何か書きつけていた。
冨永さんが待機中ノートに何か書いているというのは女の子やドライバーの間では有名な話で、あれは自伝だ、いや呪いの文句だ、はたまた何かの機密文書じゃないかとか、好き放題な噂が飛び交ってた。
そして冨永さんは動物が好き。
野良猫とかハトとかスズメとか、五反田の街にいる平凡な動物を愛しているようで、エサをやっている姿をしょっちゅう目撃されている。一度、ハトを手のひらに載せているのを見た時にはすごいと思った。
他の女の子たちの反応は2通りに分かれた。変人の冨永さんを面白がるか、それかドリームガールの真穂さんみたく怪しがって敬遠するか。
ひと口に風俗といっても、業種によってそこで働く人たちのタイプは微妙に違う。
ソープだと、男も女も仕事熱心で、プロ意識の高い人が少なからず存在していた。
けれども、デリヘルは女は心のバランスを崩しているか、楽して稼ぎたいかのどっちかに当てはまってしまう子がほとんどで、男は明らかに人格に問題があって普通の仕事が務まらないか、風俗嬢を口説きにきているかのどちらかに当てはまってしまう人がほとんど。
少なくとも、今まであたしが勤めてきた店ではそうだった。
でも、冨永さんはそのどちらでもない稀なタイプに見えたし、何を考えているかよくわからないが、かといって悪人とも思えない。
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