ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第1話>
<第一話>
大学二年に進級して二ヶ月後の六月に、宮城柊太郎は小学校五年生から十年間続けていたバスケを止めた。
中学・高校時代とバスケに情熱を傾けていた柊太郎は、大学に入ってからもずっと続けたいと思っていた。幸い進学した大学にはバスケ部があり、勧誘されるのではなく自主的に部室のドアを叩いた。
185センチという長身に天性の運動神経も持ち合わせ、高校時代は県で必ずベスト8には入るチームのレギュラーメンバーだったので、柊太郎は大学でもすぐに戦力として活躍するようになった。
先輩たちの中にも彼ほどの実力を持つ者はほとんどいない。でありながら妬まれることもなく、部活はおおむね楽しくやっていた。
そんな部活を、止めたのだった。
そもそもおおむね楽しくやっていたのは、しいて楽しいと思うようにしていたせいもある。耐えられないとまではいかなくても、耐えづらいと感じていたことはいくつもあって、それでもコートに入ってしまえば全部忘れられるからと我慢していた。
耐えづらいと感じたことのひとつにして最たるものは、バスケそのものよりも練習が終わった後の飲み会のほうに重きが置かれていたことだ。
それでも、そこで出てくる話題がバスケットボールのことであればまだよかったかもしれない。だが部員たちは居酒屋の安い生ビールを喉に流し込んでは、教授の愚痴や就職への不安、女子学生に関する噂話といったことばかりを吐き出した。酒が飲めない年齢の部員たちも、それに追従する者が多かった。
さらにその席というのがまた面倒な場所で、これまでとはまた違う形での上下関係を要求された。先輩のグラスの酒が四分の一になったら必ず酌をしろだの、会計が済んだら店の外に一列に並んで頭を下げて待ち、声を合わせて礼をしろだのといった、柊太郎にとっては謎のルールがを部内を支配していた。
柊太郎がバスケの実力ではやっかまれずに済んだのも、先輩たちはこういった馬鹿げたルールに寄り掛かることで、プライドを保てていたからに違いなかった。
「俺、部活辞めます」
ある練習試合後の飲み会で、柊太郎はついに耐えられなくなって切り出した。
その練習試合では、三ケタというありえない点差をつけられて負けていた。ボロ雑巾のようにのされた試合だったといってもいい。
しかし飲み会では皆、「次があるさ」などとのんきなことを言ってはジョッキを空にしていた。
それが先輩たちだけならよかった。同じように苦労を分かち合ってきたと思っていた二年生たちも同様だったのが絶望に拍車をかけた。その上彼らは、春に新しく入ってきた新入生たちにかつての先輩たちのように不必要なほどの上から目線で接していた。
何か、がはずれた。
「退部届が必要なら、後日持っていきますんで」
席を立ち上がり、自分の分の飲み代をテーブルに置くと、柊太郎は一人で店を出た。
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