ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第5話>
<第5話>
「……メンズストリップ?」
ストリップというものを、柊太郎は女性のものであっても見たことがなかった。が、何をするのかというのは、おぼろげながらも知っている。
それが「メンズ」となると、一体どうなるのか。
これまでの人生経験による処理能力では状況に対処できずに固まっていると、男はぶっきらぼうな口調でいきなり直接的なことを訊いてきた。
「あんた、ノンケ?」
「あ、はぁ……はい」
「ノンケ」の意味は知っている。男として性的に女性が好きだという意味だ。
「まぁ、ここはみんなダンスがうまいから、ノンケが見ても面白いと思うけどね。会社帰りに同僚と来るような人とか、女のお客さんも多いし。でも今日はメンズオンリーの日だから、ノンケだったらあまりお勧めしないけど」
「メンズオンリーって?」
「男性客、あからさまに言うならゲイしか入れないってこと。うちは週六日営業のうち、三日が女もゲイ以外の男も入れるミックスデー、残り三日がゲイしか入れないメンズオンリーデー。メンズオンリーデーは、ダンスの内容はミックスデーと変わらないけど、最後にプライベートダンスタイムが入る」
「プライベートダンスタイム?」
「ダンサーが至近距離で、そのお客さんのためだけにセクシーなダンスを披露してくれんの。内容はオヒネリ次第だけど」
オヒネリというのはあれか、縦に折ってダンサーの下着に挟む金のことだよな。というか、なぜ自分はこんなことを知っているのだろう。たぶんクラスか部活にこういうことに詳しい奴がいたのだ。はっきりした記憶はないが。
男の背後には建物に貼ってあったのと同じポスターが貼られていた。
「この人も出るんですか?」
「出るも何も、マサキさんはブーティ・ギャング・ストリッパーズの看板ダンサーだからね」
「ブーティ・ギャング……?」
「ブーティ・ギャング・ストリッパーズ。ここで踊(や)ってるメンズストリップチームの名前。ブーティは英語のスラングでお尻って意味。あとは自分で考えて」
なるほど、彼は「マサキ」さんというのか。booty gang strippersの名前の謎も解けた。
男はちらりと腕時計に目をやった。柊太郎もつられてその手首を覗くと、八時を五分ほど過ぎていた。
「で、見てくの? そろそろ始まるけど」
柊太郎はすかさず頷いた。
「でもあんた、ノンケでしょ? プライベートダンスタイムでいきなり気持ち悪いとか言わないでよね。別の日にしたほうがいいよ」
少し怖い気もしたが、どうせならマサキという彼のすることをできるだけたくさん見てみたい。
バーの奥の部屋が暗くなった。どうやらショーが始まるらしい。
「どうすんの?」
「見ます」
受付の男の最後の確認に、柊太郎はやはりそう答えた。
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