ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第6話>
<第6話>
入場料は普段バスケ部の部員たちと行っていた居酒屋に比べればずっと高かったが、そこに何度も通っていたことを考えれば、飛び抜けて高額というわけでもなかった。
年齢を確認できる物ある? と訊かれたので学生証を出して20歳以上だと証明すると、「意外と若いね」と目を丸くされた。背が高いせいもあるのか、柊太郎は年より上に見られることが多い。
ドリンクと一杯引き換えできるというコインと、出演メンバーの写真と簡単な紹介文が載せられたフライヤーを受け取ると、青い照明が照らすバースペースを抜けて、舞台――ショーステージのある部屋に入った。
テーブルに空きはあったが、一人なので角に設置されたバーカウンターを選んで座る。
バーテンにコインを渡して、オレンジジュースを注文した。フロアは暗かったが、バースペースは明るかったのでフライヤーに目を通すことができた。
マサキは柾という字を書くらしい。ダンサーは他に七人ほどだったが、在籍者の数がダンサーの数なのか、それともいわゆる二軍メンバーが後詰めとして居るのかはわからない。
ショーが始まると、ステージ上には次から次へと様々なダンサーが登場した。
柊太郎は、ダンスのことはよくわからない。高校時代、ダンスをやっていた友人がいて、付き合いで公演を見に行ったぐらいしか、それに関する知識はない。
しかし、登場するダンサーたちがジャンルや「売り」を他とかぶらせないよう工夫しているのは伝わってきた。
テレビでよく見るダンスユニットのような、おそらく正統派というのであろうジャズダンスを踊るタイプから、ヒップホップ音楽のPVで見たことのあるダンス、少し子供じみたアイドルのようなダンスや、コントを交えてお笑いの要素を取り入れたダンス、エキゾチックな動きと衣装の妖艶なダンスなど、一言で「踊る」といってもいろんな種類があるのだと心底感心する。
ダンサーたちは皆、踊りながら少しずつ服を脱いでいった。それぞれ鍛えられた体が次第にあらわになり、荒々しい原色の照明が肌を舐めるように照らしていく。
テーブル席の客たちはダンサーが一枚、また一枚と服を脱ぐたびに口笛を吹くなどして囃したて、ダンサーは彼らに流し目で答えた。最後の曲が終わる時には誰もがほとんど何も纏っていない状態……ごく小さいTバックショーツ一枚のみになっていた。
気がつくと、ここに来てから一時間半以上経過していた。手もとのオレンジジュースの氷は完全に解けて、もはや飲もうとは思えない薄すぎるオレンジ色になっている。
フロアがわずかに明るくなったのであたりを見渡すと、客の数がずいぶん増えていた。
何人かで連れだって来ている人もいたが、多くが一人ずつのようで、同じテーブルでまったく知らん顔をしながら距離を空けて座っている。年齢層は下は20代前半ぐらいから、上は顔に深い皺を刻んだ総白髪の老人までいた。もちろん全員男性だ。
やがて再びフロアのライトが落ち、スピーカーから音楽が流れだした。フライヤーに残っているメンバーはもう、一人しかいなかった。
柾だ。
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