ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第11話>
<第11回>
「あれ、あんたは確か昨日……」
受付の男は怪訝そうに柊太郎を見やった。
「いつの間に入ってたの?」
柊太郎は今ここにいる理由と、これまでに何があったかを簡単に説明した。
「昨日は本当にすみませんでした。俺、こういうところ初めてで、何が何だかわからなくなっちゃって……」
「アタシはいいんだけどさ。柾さん、というか他のダンサーだって驚かれるのは慣れてるし、別にそんなに気にしすぎることはないよ。ああいう言い方をしたのは、もっとひどい奴がいるからだし」
受付の男は本当に特に気にしているようでもなく、あっけらかんとしていた。
「それにしても災難だったわね」
訳知り顔で言われたが、柊太郎のほうは起こったことを報告しただけで、どうしてこんな状況になったのかまったく理解できていない。
「あの、結局どういうことだったんでしょうか。俺、今イチよくわからないんですが……」
男は柊太郎を若干憐れむように眉をひそめて、「あぁ」と頷いた。
「その、さっき飛び出していった奴は柾さんが育ててた新人よ。正確には新人候補というか、新人候補『だった』わけだけど」
「新人候補ですか」
そこまでは柾とミシェルのやりとりで何となくだが掴めていた。
「自分から『やりたい』って入ってきたわりには、最初から文句の多い奴ではあったんだけどね。それが、新人を育てるとなると特に厳しい柾さんに付いちゃったから……まぁ、こうなるだろうとは思っていたわ」
「ここはそんな弟子入りみたいな制度があるんですか」
「大々的に募集しているわけじゃないけど、ときどき自分から『入れて下さい!』って来るのがいるの。そのときに人員に余裕があれば育てるようにしているのよ。といっても残るのは五人に一人程度ね。ショーのクオリティを落とさないために徹底的に鍛えるから」
「五人に一人ですか……」
その割合から考えると、ここは自分がいた体育会以上に厳しいのではなかろうか。
もっといろいろ尋ねてみたかったが、話はそこで終わった。ショーの開始を前に、次々客が入って来たからだ。
昨日とは違って女性客も多い。同じ会社らしい人々と連れ立って来る者もいれば、女性同士で騒ぎながら来る者もいる。
柊太郎は自分からその場を離れてバーカウンターに戻った。
ショーの内容自体は昨日と同じだったが、昨日ほど「ぎらついて」いない気がした。
最後のプライベートダンスタイムはなかったが、最前列の女性客たちはダンサーたちがステージの前面にやって来るたびに歓声を上げたり、声を赤らめたりした。彼女たちが昨日のプライベートダンスタイムを見たらどう思うだろうと、柊太郎は二杯目のオレンジジュースを飲みながらぼんやり考えた。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。