ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第12話>
<第12回>
その日も柾は昨日と同様に最後の出番だった。
柾は一度目のショーが終わると、今日最初に見たTシャツに短パン姿でバーカウンターに来てくれた。
「そろそろ乾いただろう」
バーテンに言って、奥にシャツを取りに行かせる。自分で触って確認してから、柊太郎に渡した。
受付の男は、柾は特に新人に厳しいと言っていた。だが、もしかしたら面倒見のいいところが転じてそうなっているのではと、ふと柊太郎は感じた。
トイレでシャツを着て出てくると、もういなくなってしまっただろうと思っていた柾はバーカウンターの椅子に座って氷入りのお茶らしきものを飲んでいた。ラフな服装ながらも長い脚を堂々と組んで座る姿は柊太郎から見ても格好よくて、女性客の何人かがちらちら見ながら何か耳打ちし合っている。
柊太郎は昨日のことをきちんと謝ろうと、深呼吸をして歩み寄った。
「あの……昨日は申し訳ありませんでした」
「ん?」
バーテンがカクテルを作る手つきを眺めていた柾は、柊太郎が話しかけると振り向いた。
強い眼光に晒されると、予想していたことではあったのに心臓が飛び跳ねそうになる。
「いきなり出て行ったりして、気を悪くされたんじゃないかなと……」
「あー、まぁな」
柾の口調は素っ気なく、怒っているようでもなかった。受付の男が言っていたように、慣れているのだろうか。
それでも柊太郎は最後にもう一度「すみませんでした」と頭を下げた。
「……なぁ、お前ひょっとして、そんなこと言いに来たの?」
「え? あ、はい」
「はは、そうか」
柾は笑いだして出して、一人で納得したように頷いた。
「俺はてっきり、お前がハマったんだと思ったよ」
「はまった?」
「あぁ。こういうアソビが初めての奴にはよくあるんだけどさ。初日は度肝を抜かれて何もできねぇんだけど、次の日からせっせと通ってくれるんだよ」
頬がかぁっと赤くなるのが自分でもわかる。まさか、そんなふうに見られていたなんて……。
「だけど、お前ずいぶん若そうだしな。ここはそこそこいい値段を取るところだし、通うのはいいが程々にしておけよって次に会えたら忠告しようと思ってた」
柊太郎は黙り込んだ。通うつもりなんてもちろんないし、第一ここに通えるほど先立つ金(もの)もない。上京して一年経ったばかりのごくごく普通の大学生にとって、ここは月に二度も来たらその月は相当な節約を強いられる場所だ。
それでもたまにはまた観に来たいと、ぼんやりとではあるが思っていた。新宿二丁目には近づかないようにしたい気持ちはまだ残っている反面、高い技術を凝らしたショーに……いや、柾にどうしようもなく惹かれているのも事実だった。
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