【連載小説】Rizu〜風俗嬢の恋〜<第15話>
<第14話より・・・・>
私大の高い学費と家賃を負担してもらってる上、生活費までお母さんに払ってもらうのが申し訳なくて始めた夜の仕事。食べていければ十分なのに、いつのまにかそれを遥かに超える貯金が出来ていた。
十八歳にとっては、一生暮らしていけそうな額。使い道なんてわからないまま、さおりさんみたいに服やアクセサリーやブランド品を買い占めようとも思えないまま、お金は日々降り積もっていく。
<第15話>
安物の財布に万冊を押し込んでいると、富樫さんがちょっと身を乗り出して聞いた。
「理寿ちゃん、今日は車に乗ってかないの?」
十二時には既に終電が終わっている子のために、店には迎えのワゴンがある。女の子みんなで乗って、家まで送ってもらうのだ。ぎりぎり終電が間に合うあたしも、二回に一回はワゴンに乗って帰る。
「いえ、今日はいいです。友だちと待ち合わせてて」
富樫さんは何か感づいていたのかもしれないけれど、何も言わなかった。そう、と小さく顎を動かしただけ。
『CLOSE』の札がかかってるお客さん用の出入り口から出て、控え室に向かう。
着替え終わって二人頭を寄せ合っておしゃべりしてるさおりさんとまゆみさんに、小さく会釈をする。会釈を返してくれるのはまゆみさんだけ。
ブラジャー姿の裕未香が言った。黒いブラから小ぶりだけど形のいい、Bカップのおっぱいが顔を出している。
「理寿、今日車乗ってく?」
「ううん。まだ終電間に合うから、電車で帰る」
「そっか」
裕未香がちょっと悲しそうな顔をした。
さおりさんとまゆみさんも、同じ車に乗って帰るから。まゆみさんはともかく、さおりさんと折り合いの悪い裕未香は、ワゴンという密室の中で二十分近くも気詰まりな思いをすることに耐えられないらしい。
裕未香に申し訳なく思いつつ、素早く着替える。相模原の改札口の向こうで待っている塚原さんを思い浮かべて、早く行かなきゃと気持ちが急いていた。
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