ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第18話>
<第19回>
てまりは柊太郎が初めてショーを見た日、アイドルめいたダンスを踊っていたダンサーだった。
てまりが入団したのは今年三月で、それまでダンスの経験があったわけでもなかったから、オーディションに受かるまでにはかなり苦労したらしい。だが、今月はまたオーディションに落ちてしまったから、貧乏生活に逆戻りだとぼやいていた。
頻繁に通っていた柊太郎にはてまりも気付いており、二人はすぐに打ち解けた。二人の部屋にはかつて柾の指導に耐えかねて飛び出していった新人候補が暮らしていたが、そいつに比べると柊太郎は穏やかだし、家事にも協力的で助かるとてまりは言った。
てまりは知っておいたほうがいい、というよりは知らないと危険かもしれない団体内の人間関係や明文化されていない規則について、いちいち柊太郎に教えてくれた。
現在は柾とミシェルが二枚看板だが、頭ひとつ柾のほうが飛び抜けており、悔しがるミシェルは事あるごとに柾に突っかかるだとか、代表の和泉と「T/C Show & Lounge」の店のオーナーは恋人同士だとか。
「それからね、基本ココって体育会系で、特に自分を育ててくれた先輩の言うことは絶対なんだ。どんな無理を言われても聞かなくちゃいけないってことになってるから気をつけてね。ま、柾さんは練習はキツいけど、プライベートで無理をいうようなヒトじゃないから大丈夫だと思うけど」
ブーティ・ギャング・ストリッパーズでは、実力のあるダンサーがそれぞれ希望者を受け入れるなり、有望株を発掘するなりして面倒見るという方法で新人を育成していた。柊太郎は柾専属の新人ということになり、柾は柊太郎専属の指導者ということになる。
ちなみにてまりの先輩は柾、ミシェルに次ぐ第三のダンサーで、切れ味の鋭いジャズダンスとパントマイムを得意とするが、性格は大らかで付き合いやすいとのことだった。
どんな無理を言われても聞かなくちゃいけない、と言われたとき、トイレの個室に連れ込まれ、テストとして咥えさせられたことを思い出して、柊太郎は顔を赤くしてしまいそうになった。
あれ以来ああいったことはなかったが、もし柾が望むなら応えなければいけないということだ。
(いや、大体あれはテストに過ぎないし、柾さんが俺なんかを好きこのんで……)
気持ちを落ち着けようとするが、冷静になろうとすればするほど卑猥な妄想が生まれてきてしまう。てまりがいなければ、大きく深呼吸したところだった。
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