ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第22話>
<第22話>
「……以上の者が来月の出演者となる。各自、練習を怠らないように」
練習後のミーティングで、和泉が読み上げた出演決定者の名前に柊太郎は耳を疑い、それからしばし呆然とした。
毎月のステージの出演者は、その前の月の上旬に発表される。その日が発表予定日だとは前々からわかっていたが、まさか自分の名前が入っているとは思わなかった。
てまりに励まされてから、まだ一月も経っていない。
「柾に見込まれている」とてまりが言ったことが図らずも証明された形になったわけだが、実力に自信がついてきたわけでもなく、嬉しいというよりはそら恐ろしい気持ちだ。出演といっても前座で、扱いとしては低いほうだが、重みに変わりはない。ちなみに、てまりも同様に前座に選ばれた。
「あの……柾さん、俺……」
ミーティング終了後、柊太郎はすぐに柾に話しかけた。
「俺はまだ認めたわけじゃない」
柾は柊太郎のほうを向きもせずに言い放った。
「俺は止めたんだ。だけど和泉さんとオーナーがお前を一度ステージに乗せてみたいらしい。そう言われたら俺は止められないからな」
柾としては不本意な決定だったらしい。
「まぁ、それでもな……」
あからさまに不快そうだった柾の表情が少しだけ緩み、やっと柊太郎のほうを向いた。
「どういう理由があっても、俺がどう考えようとも、選ばれたことには変わりはない。ここで上に印象づけておけば、後々選ばれやすくもなるだろう。しっかりやれよ」
「……はい!」
大きく返事をして、柊太郎は深々と頭を下げた。
柊太郎がここでダンサーを目指すようになってから、柾と柊太郎の間には、あの日トイレで起こったことなど夢か幻だったかのように浮ついたことが一切ない。そんなことを願っている場合ではないとわかってはいたが、まったく期待していなかったといえば嘘になる。
だが、柊太郎はこの時、初めてそれでも構わないと思えた。いや、正確にいえば、「今は」構わない。まずは舞い降りたチャンスを確実にものにしようと、心を切り替えることができた。
しかし、やる気になった柊太郎に対し、柾は日に日に態度も表情も険しくさせていった。
怒鳴ることも罵ることも少なくなったが、雰囲気からしてそれは決して好ましい変化とは感じられなかった。むしろ、てまりが言っていた、
「本当にヤバくなったら逆に何も言わなくなるよ」
という言葉をじわじわと実感した。
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