ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第25話>

2014-10-18 20:00 配信 / 閲覧回数 : 884 / 提供 : 松本梓沙 / タグ : ブーティー・ギャング・ストリッパーズ 連載小説


 

JESSIE

 

<第25回>

 

公園の入り口からてまりが走ってくるのが見えた。

 

どうしてここがわかったのかと尋ねる前に、てまりは手をぶんぶん振り回しながら言った。

 

「もー、あっちこっち探したんだよ! 柊ちゃんの性格からして歌舞伎町や駅のほうにはたぶん行かないだろうし、二丁目にいないとなったら大久保か四谷か西新宿だと思ったから……とりあえず片っ端から回っていたところだったんだ」

 

しらみつぶしに探そうとしていたところ、早々に見つけることができたということらしい。

 

「お前、自分のバイトどうしたんだ」

 

「和泉さんに許可をもらって抜け出してきたよ」

 

「大丈夫なのか、その……みんなに迷惑がかからなかったかとか、給料とか」

 

「大丈夫なわけないでしょ」

 

てまりはぷくっと頬を膨らませた。

 

「一人いないだけでも大変なのに二人いなくなったわけだから、みんな店の中を全力疾走してるよ。僕のお給料、今日の分はパーだしさ。でもあんな飛び出し方されたら、追いかけないわけにはいかないでしょ!?」

 

腰に手を当て、ずけずけと物を言ってくれるてまりが柊太郎にはありがたかった。

 

同時にありがたさよりさらに深く大きく、申し訳なさが胸に広がる。

 

自分はずいぶん子供じみたことをしてしまったようだと、今さらながら反省した。柾に冷たく当たられたといっても、てまりや周囲の人々に迷惑を掛けていいことにはならない。

 

しかし理性ではわかっても、感情はそれに追いつかなかった。「さぁ、戻ろう」と差し出された手を、柊太郎は掴むことができなかった。

 

てまりは大きく溜息をついた。

 

「あのね、ステージに誰が出るか決めるのは和泉さんだけじゃなくて、柾さんとミシェルさんにも権限があるんだ。柾さんが柊ちゃんを本当に出したくないのなら、決める時点で二人を止めていると思うよ」

 

「最初は出してもいいと思ったのかもしれない。でも練習を続けるうちに、やっぱり無理だと思ったんだろう」

 

柊太郎が俯くと、てまりの表情がわずかに歪んだ。

 

てまりは無言で柊太郎の隣に腰掛けた。

 

「僕は柊ちゃんより少しだけ長く柾さんを見ているけど、柾さんは最近少しおかしいんだ」

 

「は?」

 

予想もしなかった言葉に、柊太郎は顔を上げた。小ぶりながらも整った横顔はこちらを向かず、まるで独り言を呟いているようだ。

 

「柾さんは最近、新人に厳しすぎる。柊ちゃんと入れ替わりに出ていった人のほかに、じつはもう二人も辞めてるんだ。前はこんなことあり得なかった。いくら何でももう少し……優しくはないけど、厳しすぎはしなかったよ」

 

 

 




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