ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第27話>
<第27回>
T/C Show & Loungeに着くと、受付に柾が立っていた。
受付の男の横に立ち、仁王像さながらに腕組みをしている。
出番が終わったばかりなのか額に汗が光り、ショートパンツにパーカを羽織っただけのラフな格好だった。
だが発する気のようなものは、ラフとは程遠い。近づいただけで体を切り裂かれそうだ。受付の男もそれを感じ取っているようで、肉づきのいい顔が青ざめていた。
「柊太郎、ちょっと外出ろ。てまりはフロアに戻れ。早く由井さんに挨拶してこい」
ノーという選択肢を相手に与えない威圧感。てまりは「はい」と声を出して答えることさえできず、そそくさとフロアに向かった。
柾は柊太郎がついてくることを疑わない泰然とした足取りで出口に向かった。事実、柊太郎は柾に従った。
どこに行くのかと訝しみ、怖しくもなったが、柾は建物と建物の間の狭い路地に入っただけだった。
柊太郎は向かい合って立った柾の視線が、自分のジーンズの前ポケットに注がれているのに気づいた。
「あ……」
はっとして「それ」を隠そうとしたが、遅かった。
「お前、煙草吸ってんのか」
座った時につぶれないようにと前側のポケットに入れておいたのが悪かった。箱の上側が一センチほど覗いている。
「あ……いえ、その……普段は……吸わないんですが……」
柾の鋭い目で睨まれ、言葉がうまく出てこない。どうせクビにされるならもっとふてぶてしくなってもいいのに。もうあんたには関係ないことです。そう言ってやれたらどんなにいいだろう。
「ダンスを続ける気があるのなら、煙草はやめろ」
「えっ?」
柊太郎は耳を疑った。続ける気がある? どういうことだ? えっと……クビじゃないのか?
俯けていた顔をあげると、柾はわずかに目を逸らしていた。
ひょっとして……柾は後悔しているのではないか。もともとはあれほど強く言うつもりはなかったのが、もののはずみで口から出てしまい、すぐには撤回できなかったのではないか。
以前てまりが柾を評して言った頑固オヤジという単語が頭をよぎる。
もしかして、今まで辞めてしまったという人々は柾のそんな部分を読みきれず、真に受けてしまっただけなのかもしれない……というのは、さすがに考えすぎだろうか。
だが、とにかく今再びチャンスが目の前に提示されたことは間違いない。
「……続けます」
柊太郎は言うと同時にポケットから煙草を取り出して道端に投げ捨て、踏み潰した。
「勝手なことをしてすみませんでした」
「店のまわりを汚すな。煙草を拾って戻れ。明日からまた練習だ」
柾は小さく舌打ちをすると、柊太郎を待つこともなく一人で店に戻った。
そのすらりと高い逞しい後ろ姿が、何となく愛らしく思えた。本人にそんなことを言ったら、きっと激怒するだろうが。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。