ブーティー・ギャング・ストリッパーズ<第43話>
<第43話>
(そういうことだったのか……)
柊太郎は返事もできず、柾を見上げることもできず、自分もカップの淵を見つめた。
「お前に聞いておきたいことがある」
半ば呆然としていた柊太郎は、柾の鋭い声に慌てて顔を上げた。
「お前は今まで、何だかんだで俺についてきてくれた。そこは感謝している。だが、俺はもしかしたらこれから、今まで以上に厳しく当たったり、ときには理不尽なことを言うようになったりするかもしれない。何しろ、俺は今焦っているからな」
柾は言葉とは裏腹に、喋りながら胸を張っていった。焦っているという表現や、実際のその気持ちに負けまいとしているのかもしれない。
「そのうちに、お前を壊してしまうようなこともしてしまうかもしれない。お前が完全に自信を失って立ち直れなくなるようなことも。だから俺は今、ミシェルか他の誰かにお前を預けるつもりだ。少し前から決めていたことだ。異存はないな?」
「そんな……」
柊太郎は絶句した。「聞きたい」と言ったくせに、それはほぼ断言であり、決定事項の通達だった。
少し前から決めていた……それで柾は、柊太郎に距離と距離を置くような態度をとっていたのか。
「お前にとっても悪い話ではないはずだ。現にお前はここ最近、俺の言動に振り回されていただろうからな」
「そんなことありません!」
とっさに答えたが、嘘だった。嘘だったが、貫き通すつもりだった。
「俺は柾さんに憧れてダンスを始めました。だから何があっても……その、最後まで……柾さんに教わりたいです……」
「最後」と口にするのを一瞬ためらう。が、言った。それが事実だというのなら、受け入れなければならない。
柾の目がすぅと細められる。周囲の気温が下がったように感じられた。心の内側の襞まで値踏みされるような、冷たく、酷薄な目。
それでも柊太郎は続けた。ここで、食らいつかなければ。
「今までのことを感謝していると言って下さるのなら、どんなにひどいことをされても、それだけで俺はこれからも柾さんについていけます。だから……」
「ひどいことをされても……か」
柾が静かにソファと立ち上がる。ゆらりと陽炎が立ち上ったかのような長身に、柊太郎ははっとした。
「俺はお前をつぶすぞ」
柾は柊太郎の横に歩いてきた。
次の瞬間、体がふわりと宙に浮く。小さくもなければ軽くもない自分の体を、柾は軽々と持ち上げたのだ。
そのままベッドに運んでいく。一連の動作はあまりにも素早くて、滑らかで、
「ちょ、柾さん何を……?」
柊太郎がもがいたのは、ベッドに仰向けにされてからだった。
「お前、男と寝たことはないって言ってたよな?」
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